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回らないお寿司屋さん、惣四郎!
我が家のこどもたちは「寿司は回るもの」という常識の外に、ほぼ出たことがありません。

三方海に面した房総半島の南端ではおいしいお寿司やさんなんて犬がぶつかる棒以上にたくさん転がっていそうですが、野良仕事で疲れ、夕方館山に出てコメリやカインズでばたばたと買い物をしてさらに疲れた後には、美味しいもの食べたい欲はがんばっても「やまと行くか!」どまりです。

加えて、カインズホームの真隣り(あるいは敷地内?)に先日スシローが開店。
とんでもない行列におびえて遠巻きに見ていただけでしたが、金曜日の夜遅くに館山到着という日があった際、チャンスとばかりに入ってみました。そこかしこに貼ってある「全品105円」に改めて感嘆の声をあげ「みなさーん!本日はお皿に色分けはありませーん。何を食べてもいいですよ~~」と家族に明るく声をかけ席に座ってビックリ!!

オーダーシステムがすごい。。

各テーブルに設置された画面でメニューを見て、「いくら軍艦巻き」「しめサバ」などタッチパネルを押してセレクト、「ご注文を承りました」という表示の後、待っていたらチンコロロンというメロディーと共に「ご注文のお皿がまもなく到着します」というアナウンス。それとほぼ同時にいくら軍艦巻きとしめサバが届くという・・・まるで工場のラインに立っているような錯覚が。
‘お寿司屋さん’という風情がかろうじてあるスーパー回転寿司やまとに対し、スシローはパチンコ屋とかゲームセンターみたいな風情。ポチンはこのアミューズメント感をやたらと気に入って、「こんなにおいしくて楽しいお寿司屋さんはじめて~♪」と夢心地。
よ、よかったねホント、とディズニーランドの代替品に出会い幸せゲットのポチンに気圧されるも、高々と積み上げられたお皿タワーに比して「こんなに・・やす?」と親もポチンに劣らずハッピーに。
105円が回ることで、幸せが売られているのね。


そんな、決してレベルの高くないわたしたち。
先日夫の母を招いた時に「せっかくだから、美味しいお寿司でも食べに行く?」「・・・やまとか?」「やまとか。。」「じゃなかったらスシロー?」「いやいやいやいやもうちょっといいところでしょ」「ばんや?」「ばんやか。。」・・・以上。
貧弱なラインナップが露呈。房総のウマイモンに胸をはるどころか。

そこで、南房総4年目にして初めてやっとこさ重い腰をあげて、「回らないお寿司屋さん」を探し始めました。

これがなかなか難儀で、美味しそうでも子供3人連れて行くのはちょっと・・・というオトナのお店とか、敷居をまたいだ途端にお財布からサイレンが鳴りそうなお店とか、「おっ、ここいいじゃない?近いし」とやっとヒットしたと思ったらご主人がつい最近火事で亡くなっていると書いてあったりとか・・・まあ難しい。

やっぱり今夜もやまとかなあ~と諦めかけたときに、パソコンに向かっていた夫が「オヤジがガンコらしいけど・・・yahooグルメの口コミ評価が全員★★★★★のお店があったぞ。食べログでの評価は分かれるな」とぶつぶつ言い出しました。「ちょうど帰り道だし、ここ予約してみない?」

えーガンコおやじ?子供が騒いだら怒られそうだなあ、大丈夫かなあ、とイマイチ気乗りしないわたしでしたが、全員5つ★というフレーズがひっかかって予約の電話を入れました。
「あのぉ、こどもが3人もいて、しかも1人はまだ乳児だったりするんですけど」
な~んとなく卑屈な予約。
「いいです、19時ね。はいどうも」
期待はしてなかったけど、見事に愛想はない。
でも一応オッケーとれた。


「いい?今日のお寿司はね、回りません。お店のヒトも怖いかもしれません。だからなるべく静かに!親の頼んだもの以外は勝手に注文しない!わかりましたか!」

と、つまらないことを言い聞かせて車に乗り込みました。
たまにはいいのです。こどもがオトナに合わせる日があったって。


・・・安房勝山の、海沿いのメイン通り沿いに「寿し 惣四郎」はありました。
「おすすめ Aセット1050円 Bセット1250円」
「おいしい地魚にぎりをどうぞ」
「何時来ても新鮮!おすすめ!」
などとたくさんの貼り紙がしてある、とても小さなお店。
へー思ったより安い。しかもガンコで無口かと思ったら貼り紙は多弁だなあとぶつぶつ考えながらお店に入ると、確かに、ガンコそうなオヤジさんが、立っていました(けっこうカッコイイ)。奥さんと二人で切り盛りしている様子。
他にお客はおらず。

お座敷にぞろぞろあがって店内に貼ってあるメニューをぐるぐる見渡しました。
「あら!さざえの壺焼きがあるのね。これいただきたいわね」と夫の母が声を弾ませると、「こんな時間にはもうないですよ。昼に売り切れちゃうから」とオヤジさん。
コワ・・・
「昼間はね、まいんち行列で大変だから。欲しいものがあれば前もって予約の時言っておいてくれれば、取り置くから。そうじゃないとなくなっちゃうよ」
そうか閑古鳥ではないらしい。
せっかくいいお寿司屋さん選んだつもりけどやっちゃったかなあ、と我が家だけがお客の店内に不安を覚えていたので、行列と聞いてすこし安心。「じゃあ、地魚にぎりのBセットを」と、みんなでひとまずオススメされているものを食べてみることに。

「うちはね、ホームページも出してないし、テレビの取材もぜんぶ断ってるんだ。口コミで来てくれればいいって考え方でね。そのかわりやみつきになるお客さんは、葉山のほうから1週間に1ぺんは来てくれる。うちしか出してない魚が多いからね。他じゃ食べられない」

どうでもいいけどよくしゃべるわ・・・

「気に入った雑誌しか出ない。あとはね、口コミ。他の店はテレビに出たがるけど」

「あのーわたしたち、南房総市にセカンドハウスがあるんですけど、帰り道に何度か○○漁港直営の『▲▲や』に寄ったことあります~。テレビでもよくやってますよね?」

「ああ、▲▲やね。あそこは安いっていうけど何でだか知ってる?ほとんど築地から仕入れてるんだよ。まぐろなんてこのへんじゃ獲れやしない。イクラだってそうだ。でもみんなそういうのを食べたがるからね。海に近くてもだいたい仕入れは築地よ。意味がない」

へ~~~~。。
オヤジさんにはナイショだけど、▲▲やはかなり頻繁に使っていたのでショック。

「ここは地魚にぎりっていうくらいだから、そうなんですよね?」

「そうよ、本当にここで獲れるものだけ。毎日違うし、普通はにぎらないものもにぎる」

オヤジさんの与太話(というか自慢話)に相づちを打っていると、「はいお味噌汁」と出て来たのが見たこともない具!
お味噌汁の上に、焼いたアジがまる1匹、どん!とのっかっているんです。はみ出してるし。
あー写真撮らなかったなあ!!美味しそうで何も考えずに飲んでしまった。
興味のある方はグルメ情報の写真で見てね。

すごいなあこれ、むちゃくちゃ美味しい、とみんなでアジをつつきながら愉しんでいると、「はい」とお寿司が出て来ました。

それが、これ!!

回らないお寿司屋さん、惣四郎!_b0128954_13573184.jpg


見事な白身魚オンパレード。
すべてのにぎりの色合いが微妙に違い、本当に美しい。

そして「これが今日のにぎりね」と奥さんが持ってきてくれた紙。

回らないお寿司屋さん、惣四郎!_b0128954_11394494.jpg


「すげー!こんな魚が獲れるんだ!」と最も喜んでいたのはニイニです。
イシガキダイ?ヤガラ?カスミアジ??そんなお寿司、食べたことない。

小振りなにぎりをぱくりと食べると、これが・・・本当においしい。
お腹が空いているもんだから次もすぐぱくりと食べると、「うわ、ぜんぜん味が違う!」
同じ白身でこんなにも味が違うってびっくり!!
回らないお寿司屋さん、惣四郎!_b0128954_1431210.jpg

タチウオ甘い。本当に甘い。
口が掃除機のホースみたいなヤガラも、刺身は上品ですごくおいしい。
どれもこれも、新鮮なのか寝かせ具合がいいのか、口に残る旨みが強烈です。

「おじさん、、これおいしいです」

「おいしいんだよ。どれもちゃんと刺身にできるんだよ」

Bセット12カン、一瞬でぺろり。
追加でオーダーすると今度は紙に、「コショウダイ イラ ハタ クロムツ」とある。

「これ、すっごい!あまい!」

「イラだろ?それはうまいんだよ。きみ、イラって知ってる?」

ニイニは手がとまって「イラ・・・(しらない。。)」

「ベラの仲間だよ。イラ、うまいだろ?」

「う、うまいです」
・・・ニイニ完敗。普段なら‘魚を語れる小学生’ということで感心してもらうことも多いニイニが、オヤジさんの前ではその知識をひけらかす隙を与えてもらえず、単なるメガネの小学生客に成り下がっていました。

いやあ、ただのガンコ自慢オヤジさんじゃなかった。
このヒトすごいわ。このお寿司すごいわ。
こんなに美味しくて、うんちくも楽しくて、また来たいと思うお店はなかなかない。
地魚を食べるというのはこういうことなんだなと、感動すら覚えました。

オヤジさん一人でにぎっているため、大人数で押しかけると注文してから待たされそうだなとは思いましたが、それでもまた来たい。
「予約してくれれば鍋も出すし、天ぷらもつくるよ」と言ってもらいましたが、わたしはまたお寿司が食べたい。

ちなみにお会計は、オトナ4人(ニイニ含む)子ども2人(マメ含む)がたらふく食べて、1万円を切りました。なんかちょっとサービスしてくれた気がします。


あー。
久々に、教えるのがもったいないお店です。
これから白身魚の美味しい季節。南房総は1月のいちご摘みまでとりたててイベントがない状態となりますが、行き帰りのついでに惣四郎に寄るっていうのは、特大イベントになるかと思います。
ランチは混んでるらしいから要注意ね。

あーーー。
書いてたら、ますます行きたくなった。
オヤジさんはウルトラジーマンだけど、実は親切だし顔もいいし、ホントならぶらっと女ひとりで行って、カウンターで握ってもらいたいなあ~

(どうせ今後もたいていは、回ってるところにぞろぞろ子連れで行くんだろうけど)
by babamiori | 2010-11-25 11:40 | 食べ物のこと
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ひょんなことから、南房総に8700坪の土地を手に入れてしまいました。平日は都心で建築ライター・コーディネーターとして働き、週末は南房総で野良仕事。ちょっとムリして始めてみた二重生活ですが、気付けば主客転倒で、どっちがメインの住まいかわからなくなっています。田舎暮らしの衝撃と感動、苦悩と快感をそのまま綴ります。 ニイニ中3、ポチン5年、マメ1年。

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