三芳村に来て、いつも実感すること。
外食産業が、ほとんど存在しない… 夜の8時にあいているお店がほとんど存在しない… 夕食もとらずに夜ばたばたと家を飛び出してセカンドハウスに向かうことがよくあるのですが(何としてもアクアライン割引時間内に通りたいのでね)、三芳村に向かう途中で館山自動車道をちょっと早く下りて食事すればいっか。と考えると、ハマります。 都心での常識から言えば、夜8時に閉まるレストランこそ、存在しないはず。でも、「オレらが知らないだけで、手頃な食堂がどこかにあるはずだよ」とうろうろ走り回った挙げ句、あらあーこの道にも1軒もない?まさかこの道にも?うっそでしょ?と笑えるくらいどこもやっていなくて「…お米はあるから、うちでおむすびつくるよ」と空きっ腹でセカンドハウスに倒れ込んだということもあり。わたしたちが見つけた唯一の深夜営業店は、金谷港近くの「ガスト」のみです。(夜8時っていうのはふつう、深夜?このへんにいると、すごく深い夜だと思ってしまうけど。だってどこを見てもひとっ子ひとり歩いてないんですもの。) そんな時、かなり捨てばちな気分で入ったのが、この、いかにもB級なお弁当やさん。 赤い屋根に「としまや弁当」と、書いてある。 しかも、巨大なプラカードのような看板に巨大な江戸文字で「弁当」とある。 車で県道を走っていると、このプラカードがやたらと目につきます。都内や他県ではまったく見たことがないのに、千葉県を走っているとしょっちゅうお目にかかるんです。 車窓から覗き見るに、その店内はとってもオシャレじゃなくて、とっても活気がなくて、とっても食欲がそそられなくて、ひょっとしたら倒産して放置された店なんじゃないかと思わせるような殺伐とした雰囲気のお弁当やさんなのですが、そのあまりにやる気のない外観とデカデカと掲げられた「弁当」の文字の持つ強さとのギャップにかえってそそられるものを感じ、一度は入ってみたいと密かに思っていました。 ある日、思い切って、 「あの‘弁当’って書いてあるお店に、入ってみたいんだけど」 と、体に悪いからよしなさいと怒られるのを承知で「よっちゃんイカが買いたいんだけど」と親にねだるこどものようにはじめっからスネたような口調で切り出すと、 「お!とうとう入ってしまうか?あのマイナー感あふれる店に?」 と意外にも乗り気な夫。 「弁当って書いてあるんだから、少なくとも何か弁当は売ってるはずだよ」 「これで意外にウマかったら笑えるな」 「いやあ、失敗してもぜんぜん想定内でしょう。ものは試しよ」 おいしいはずがない、という前提でお店に入るなんて、なんだかバカげていますが。 店の前に車をとめ、おそるおそる店内に入ると、そこは、車窓から覗き見た時に察した雰囲気がそのままたちこめていました。お弁当の種類が壁の上の方に写真付きでずらずら貼ってあり、ぽかーんと広い店内にはよくわからないセレクションのお菓子やらカップラーメンやらが並び、窓際には普段コンビニなどでは見たことがないような不思議な(というか男性専用のディープそうな、たとえば刺青の)雑誌ばかりがずらずら並んでいます。 「な…なににしよう」 腰がひけたわたしは、お弁当を選ぶ前になんとなく店内をうろうろ。やっぱ帰ろうかな…なんて今さら言えないし…と思っていると、1枚のポスターに目がいきました。 えー、なんだって? 『キムタク夫妻もサーフィンの時に買いに来て美味しいと絶賛した、名物‘チャーシュー弁当’』 なにーーーッ! キムタクが食べたって?! としまや弁当を?! 「キムタク御用達」という恥ずかしいまでに客寄せパンダ的な文言で、一気にマイナーな気分が吹き飛ぶわたし。つっけんどんで冷え切った店内の空気が「穴場感」を演出するポジティブなものに感じられてきたりして。 芸能人来ちゃうんだって!ねえねえしかも天下のキムタクだって!と夫の肩をゆすって喜ぶくだらなさを自嘲するゆとりもなくてね。 ミシュラン三ツ星店でも発掘したようなホクホクした気分でオーダーしたのはもちろん「チャーシュー弁当」。そして夫は「クリスタル弁当」(なんじゃそりゃ)。ニイニは「イカフライ弁当」。 レジにいたおばさんにそう告げると、「少々お待ち下さい」と厨房に入り、もうひとり中にいたおばあさんとふたりで、せっせせっせと料理をはじめました。 「ねーねー、おかずここでちゃんとつくってるよ」 ひそひそ声で夫をつつくと、 「おい、今揚げてるよ、オレの唐揚げ。ちゃんとアツアツが食べられるんだな」 と、ちょっと嬉しそう。(何よりも冷えたご飯の嫌いな夫。) そして、待つこと10分。 あまりに待たされるので、まさかオーダー入ってからお米といで炊いてるんじゃないだろうな、と心配になってきた頃、おばさんが「お待たせしましたー」と湯気のたったお弁当を持ってやってきました。 こりゃいいや、コンビニ弁当よりぜんぜんいい、とアツアツのお弁当を抱え込み、冷えないうちに三芳村に着かねばという使命感に燃え、湯気の匂いを嗅ぎながら家路を急ぎました。 家に着くなり、荷物も放り出したまま、お膳にお弁当を広げたわたしたち。 写真をとるのも忘れ、キムタクがサーフィンの時に食べていたというメジャー感あふれる「チャーシュー弁当」を、ぱっくり。 「…あ、これは、おいしいや」 チャーシューが甘すぎず、醤油の味がしっかりしみこんでいて、しかも柔らかい。脂っこすぎない。パサパサでもない。 そしてまったく潔いことに、チャーシューとごはん以外、何も入っていない。 これで630円なり。(たぶんそれくらいだった。) 相当お腹が空いていたからか、お味の染みたご飯粒も一粒残らず一瞬でたいらげました。 夫のクリスタル弁当にはシャケとタルタルソースのかかった唐揚げが入っていて、これも「わりとイケる」とのこと。ニイニのイカフライも、「うま!」と食べていましたが、ニイニはほとんどのものを「うま!」と食べるため味は不明。 でも総じて、 としまや、けっこうイケるじゃん! というのが、我が家での評価でありました。 安いお弁当でもしっかり暖かくてしっかりボリュームがあってしっかり味が付いていれば、侘しい気分にならずに食べられるってもんです。でも、わたしのように家でほぼ毎日食べている人間は「お弁当」って食べる機会などはあまりないので、けっこうピクニック気分で楽しかったりして。 チャーシューを頬張るわたしの頭の中では、キムタクと静香がウェットスーツのまま「チャーシュー弁当」を買って、テトラポットとかに座ってキラキラする海を見ながら食べている逆光の絵が浮かんでいました。アグネスラムのパチンコ台のCMくらい陳腐な妄想がチャーシューの味を3ランクくらい引き上げていたことは否めません。わたしの舌もニイニ並みにイイカゲンだな。 それにしても、あまりにサムいお店だと、かえってポスターを張る効果があるということがわかりました。考えようによっては、内装を気張るより費用対効果がいいかも。 としまや弁当、千葉にしかないチェーン店なんですって。 房総へお出かけの際はぜひ勇気をもって、としまやに飛び込んでみてくださいな。
by babamiori
| 2008-11-08 01:29
| 食べ物のこと
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ひょんなことから、南房総に8700坪の土地を手に入れてしまいました。平日は都心で建築ライター・コーディネーターとして働き、週末は南房総で野良仕事。ちょっとムリして始めてみた二重生活ですが、気付けば主客転倒で、どっちがメインの住まいかわからなくなっています。田舎暮らしの衝撃と感動、苦悩と快感をそのまま綴ります。
ニイニ中3、ポチン5年、マメ1年。
by babamiori
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