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春が来た:にょろにょろ編。
「パパが、4は縁起が悪いから、もう1匹いいって」

息を切らせて帰ってきたニイニは、18枚の障子のうちの7枚目をしこしこ張っているわたしにむかって突然こう叫びました。なんのこっちゃ。
「もう1匹ってなによ?」
と顔を上げている間に、瞬時に察するわたし。
「まさかニイニ・・・また飼うっていうんじゃないでしょうね?あの水槽はもう、いっぱいよ」
「ううん。パパが大丈夫だって!!ママがOKって言ったら、飼っていいって!!」

なによ。パパってばいい顔しちゃってさ。
いつもはニイニに「おまえ何でも飼いすぎなんだよ。いくつか放流して水槽たたんだ方がいいんじゃないか?水槽9本っていうのはいくらなんでも多すぎるぞ」と諭したりしているくせに、いざ現場でカワイイやつを捕まえちゃったりすると「パパはいいと思うけどなあ・・・ママに聞いてごらん」なーんて言ってニイニ側に立つんだよなあ。悪役をわたしに押しつけて。
だいたいここでわたしが「だーめっ」と言ったところで、どうせ夫はあとでニヤニヤやってきて「1匹くらいいいんじゃねえか?」なんて言うに違いない。


空っぽの予備プラスチックケースを抱え、「もう1匹」のところに走って戻っていったニイニは、15分後に「もう1匹」を入れて戻ってきました。
「ドブの升をのぞいたら、水の中にうっすら影が見えたんだ」
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「このアカハライモリ、お腹の模様がカッコイイんだよ。赤いところが多くて。だからさあ飼っていいでしょ?」
ジーザス。これで君は東京までお持ち帰りされる身だね。
まあ、ニイニは飼うとなったら手を抜かずにきっちり世話をする方だから、君もニイニの部屋で共に寝起きして長生きするだろうよ。


突発性発疹で39度の高熱を出している(わりに食欲も落ちずに元気だった)マメが家にいたため、わたしは家で障子張りの続きをするのが関の山でしたが、夫とニイニは「水辺のタマゴ探検隊」となって家のまわりをうろうろほっつき歩いてきたようです。
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まずは、前回確認したトウキョウサンショウウオの卵の在処を確認したそうな。
「この間は一面サンショウウオの卵嚢だらけだったのに、今日は4つしかなかった」とのこと。
生き残りを、愛おしそうにそっと持ち上げるニイニ。
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倍率ドン。さらに倍。
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おっ、中身が育ってる!
前回はぐりんとした黒い玉だったのに、今回は幼体っぽくなっています。
あと1ヶ月くらいしたら、他の生物のエサになるために生まれてきたようなひ弱な幼体が飛び出してくることでしょう。

次に覗いたのは、先日コメントいただいて「ヤマアカガエルの卵」と同定された卵嚢のある田んぼだそうな。
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そしたら、バラバラになった音符が水中にばらまかれていた!
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倍率ドン。さらに倍。
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ぐじょぐじょぐじょと折り重なった無数のオタマが。
東京の家の近くの公園ではちょっと前にラブラブ中のカエルがいたくらいで、卵さえ確認できないくらいなのに。カエルの卵を見ると入学式の頃の空気を思い浮かべるので、季節感がちょっと狂います。
この音符たちもほどなくケロケーロになり、我が家の畑にやってくるんだ~。楽しみだ!


ニイニの行脚は、まだまだ続きます。
うちの離れの畑の脇にある用水路の升。1年前にサンショウウオの卵をとったところです。
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このニイニの一心不乱な後ろ姿、微妙にオヤジ臭くてマニアックで、このまんま健やかに成長したら1週間に1度しかお風呂に入らないでも平気で服はくたくたのヨレヨレを夏冬それぞれ3着しか持ってなくて顕微鏡と捕獲網がお友達の人間になるんだろうなあという感じ。理解のあるお嫁さんを見つけないと、孫の顔が見られないぞ・・・

というのが親の育て方のせいかどうかはいいとして。
卵嚢は去年と同じところに、あったんだって!
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うーん。感慨深い・・・
当時はこんなものとってきちゃったけどホントに育つのかしらと疑心暗鬼だったのですが、水槽の中で卵が孵り、手足が生えてきて、外エラが消え、12匹が無事にひょこひょこと上陸するまで手塩にかけて育てあげたわたし(←サンショウウオ飼育係)としてはこれを見ると、自分のお腹の中の赤ちゃんに馳せる想像力みたいなものが起動して「お~よしよし」と目を細めたくなります。(まあ、去年の今頃といえばわたしのお腹の中にもサンショウウオやカエルみたいな顔した赤ん坊がいたからね。)
今年見つけた卵は、あった場所にそっと返しておいたそうです。どうかどうか、誰も食べませんように・・・(卵嚢のブヨブヨって、苦くてマズいらしい。食べられないための術はそれだけなんだって。よわ。)

春はそこらじゅう新しい命だらけ。見えている風景の奥の方や自分の足の下に無数の命が生まれているのだと思うと、何だか内蔵がゾクゾクしてきてウキャー!と叫びたくなります。


ところで、我が家で今飼っているサンショウウオのうち、食が細くて心配していた1匹が、先日とうとう☆になってしまいました・・・。合掌。
水から上がったところで休憩している形のまま、しんなりと白っぽくなっていました。一生懸命アカムシをやってたのに、やっぱり本人に食べる気がないと、なかなか育たないんだよねえ。
夫曰く、「エサを変えてみればよかったかもな」。痩せてるな、育たないなと思っていた時点で、ホソワラジムシやシロワラジムシをもう一度与えてみるべきだったかも。
今その子は、うちの冷凍庫で眠っています。(恐ろしいことに、うちの冷凍庫は一部、☆になった水槽の住人たちの霊安室となっているんです。「シマドジョウの死体の隣りに置いてあるアイスを食べるっていうのも、なんだかなあ」と夫はいつも不満を言う。まあ確かに。この間ふっと見たら、かちかちの冷凍トウヨシノボリがぽろっと落ちてたしなあ。)
こんどセカンドハウスに行った時、この子が生まれた場所の近くに埋めてこようと思います。
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by babamiori | 2009-02-26 18:17 | 週末の出来事
春が来た:定番編。
「ホー、ホケキョケ!」

三芳村に到着した朝、今年はじめてウグイスの声を聞きました。
あ~春、と思いながらも、毎年感じる疑問が頭をよぎる。
声はいい。確かにいい。
でも「ケ」は蛇足じゃないか?

ウグイスの鳴き方って生まれつきじゃなくて親の声を真似て練習すると言うので、うちのまわりのウグイスたちもそのうちホーホケキョと鳴くようになるんだと思っていました。いや、みーんなホケキョケって鳴くもんだからね。
でも、春のはじめに「ケッキョ」とか「ホキョ?」とか言っていた子たちがやがて立派に「ホー、ホケキョケ!」と言えるようになるのを聞いていて納得。
このあたりではホケキョケ!が完成形なんだと。
子らはホケキョケ!を目指して練習してるんだなと。

鳴き声が聞こえると思わず梅の木を見やってしまいますが、ウグイスの姿を見ることはほとんどありません。
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梅に鶯。春だなあ・・・
とはいえ、日当たりのいいところにある梅の並木は、もう花が終わっています。やっぱり南房総は、東京より春のすすみが早い。


菜の花畑も満開。
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でもうちの菜の花、なぜかツートン。
誰か半分だけになんかまいた?
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雑草を気にするには早いこの季節。
ビニルハウスの隣りは芝生だけが生え、いいかんじの原っぱになっています。
ちなみにこの状態は1ヶ月ともたない。来月の今頃はごっついやつが一面にニョキニョキ生えているはず。神様時間を止めてぇ~
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お昼ご飯は、前代未聞の「ふきのとう焼きうどん」。
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・・・キャベツ用意するの忘れちゃったから、こそこそとふきのとうを摘んできて代用した次第。ごっついしょうゆ味の焼きうどんと、繊細なふきのとうの香りのマッチングは、ん~、77点。
まあおいしいんだけどねー、なんかイマイチ違和感あり。食感で-10点、見た目で-10点、やっぱりキャベツの方が合うじゃんという反省で-3点。
ふきのとうの香味は、もっとつるりとした食感のものに合う気がしました。お素麺のチャンプルーならもっとよかったかも。
それにしても、マメはうどんをたべるのが上手いです。10cmくらいのうどんの端っこを口にくわえさせると、掃除機のコードをしまうみたいにしゅる、しゅるるる、しゅるんっと吸ってしまう。マメの口のサイズにしてみたら、水道管をくわえさせられているようなもんだろうに。

食後は春風をうけてまったりのんびり。
マメの後頭部の不毛地帯(帯状の寝ハゲ)にもやっと芝生が。
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このあとの「春が来た:にょろにょろ編」は、次回。乞うご期待!!
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by babamiori | 2009-02-23 13:23 | 週末の出来事
ブサイク野菜を買いたくなる空間って。
三芳村の道の駅にて、一目惚れで購入。
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ボリュームはフツウのにんじんの1.5倍。
で、50円。
値段の横にボールペンで「ワレ」と書いてある。
確かに、横っ腹がはじけたように割れていました。

ドロドロのゴツゴツだけど、それがいいんです。
このコーナーには他にも、太さやゴツゴツさ加減の違うものがいっぱい売っていて、わたしは骨董品を選ぶような気分で、このにんじんに決めました。
キュートな曲がり具合といい、先っぽからうわっとクレッシェンドになっているような太り方といい、「奇形で何が悪い」と言わんばかりの堂々とした風貌といい、他を圧する存在感でした。

よく思うのですが、地元で直売されている野菜を買うとき、形が整っているかどうかっていうことはほとんど価値判断の中に入りません。
というかむしろ逆。これってスーパーじゃ売れないからここで投げ売りされているんだろうなあ、と思うような形の悪いものがたくさんあると、胸がときめいてしまいます。くねっくねのいんげんやキュウリやナス、白いところが少ないネギ、雑草のようにボウボウとした水菜、どれも粗野でセクシーです。

でも、こういう形のものって、東京のスーパーではまあほとんどお見かけしませんよね。いや、館山の大手スーパーでも見かけません。(三芳にはスーパーがありません。)
形が整っている方が箱詰めするときにきっちり隙間なく詰められるからいいとか、整った形のものじゃないと剥いたり同じ大きさに切ったりしにくいからとか言われていますが、まあ結局のところ消費者が美しい形を好み、ブサイクなものを嫌うからでしょう。

キュウリも曲がらないように紐でしばってまっすぐにするらしいし。
農家の方々もご苦労なことです。そうじゃなきゃ売れないんだったら、仕方がないですよね。
そのうち角切りに便利なキューブ状のトマトや四角柱の大根が開発されたりして~

でも!
スーパーで買い物をする時はわたしも「線対称の形のもの」や「曲がってないもの」など、御しやすい野菜を無意識に選んでいたりする気が・・・
こんなに高いならブサイクなのより美しいほうがいいじゃない、と思っているというのもありますが、それだけじゃない気がする。
で、気がついたのですが。

「売り場が清潔で整然としていると、整った形のものの方が、新鮮でおいしそうに見える」
そして逆に、
「売り場が露店や市場のようだと、暴れた形のものの方が、新鮮でおいしそうに見える」

・・・こんな法則があるんじゃなかろうか?

多少変な形のものも流通すればいいのにな。セレクトされたものを見ると、その後ろで廃棄されている無数の野菜が目に浮かんで悲しい気持ちになるのにな、という素朴な思いや願いは、こんな消費者心理の壁にぶち当たって玉砕していたんじゃなかろうか。
・・・違いますか!?(ぜんぜん違ったりして)

よく、賢い消費者になることが肝心などと言いますが、その賢さを引き出したり今までとは違う感性が働くようになるためには、売り場の雰囲気改革も必要なのでは、と思った次第です。
いやだからといって、スーパーの売り場を青果市場みたいに段ボール売りにしちゃえばいい、という短絡的なことではなくてね。既成概念を覆すようなインテリアにすることで消費者の意識改革も誘導できるんじゃないかって、思ったのです。
じゃあどういう売り場なら意識改革されるのよって、すぐに思いつかない(思いつくのが青果市場のイメージ・・・)のが弱いんだけど。

ホントに消費者が賢ければ、そんなイメージ戦略は必要ないんだけどね。
ブサイク野菜も新鮮さと味勝負で堂々と流通するようになるにはどうすればいいか、ということを、空間的なアプローチから考えてみることに意味があるのかどうか。
意味があるとお考えの方!一緒に考えましょう!(誰もいなかったりして・・・)


話は戻りますが。
上記の愛すべきにんじんは、1週間ほどキッチンのカウンターの上に鎮座してみんなから愛でられた後、「あー葉っぱが生えてきちゃった。いくら新鮮なもの買ってもこれじゃアカンわ」と慌てて丸剥きされ、トマトスープの中でたゆたうことになりました。
(マメが離乳食となり、スープだのシチューだの豚汁だのけんちん汁だの具の充実した汁物系ばかりつくっている昨今。)
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ちなみにこのスープの具の野菜は、全部三芳の道の駅で買いました。
今年こそ、「このスープの具の野菜は、全部うちの畑で獲れました」に変えてやるぞ~
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by babamiori | 2009-02-19 12:47 | 食べ物のこと
農業をデザインするっていう動き。
東京の家の近所のオサレな雑貨屋さん1階が、週末ごったがえしていました。
テレビの取材かなんかも来ちゃっててたーいへんな混雑。
なんかのセール?フリマ?

と思ったら、こんな服を着たヒトたちがうろうろ。
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倅マーク。誰の倅だって?
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「農家のセガレの店」。
なになに?
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みんな、いろいろ考えるよねえ。
農家をやっている親がつくった野菜を、農家を継がなかった倅が都会で売る、というユニットらしいです。

へ~と思いながら売り場のラインナップをチェック!
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キャベツ1玉300円、にんじん1本100円、ねぎ1束200円。
ちょっと高級なスーパーくらいの価格設定でした。きっと地元の売値よりぜんぜん高いだろうけど、場所柄こういう値段でもちゃんと売れているようです。

親をちょっとでも助けたいとする彼らの活動を、メディアも注目しているみたい。
売り場のデザインを見ると素朴感の演出などが上手で、都会に住むヒトの感性に訴えかけるコツをよく知っている、ブランディング能力のある方達だなと思いました。

こうやって農業がフィーチャーされるようになってきたのって、ここ最近ですよね。
雑誌「ブルータス」で農業の特集を出したり(倅の店も載ってました)、芸能人が農園をやったり。農業をファッションにしようというかんじでしょうか?
なんだかこういうの、ちょっと胡散臭いなと思わないでもないです。わたしが中途半端に田舎暮らしをかじってしまっているからだと思うけど、ホントに農業を営む方々の「スタイリッシュでない」魅力ははじいてしまって、表面をラッピングした「農」だけを受け入れるというメディアの姿勢にも疑問を持ちます。

でも一方では、農業なんてダサくて稼げなくて辛いからエンガチョと無視されていた時代よりはずっとましかな、と思ったりする。
「ファーマースタイル」がカッコイイなんてことになって、オサレな長靴や麦わら帽子を買ったりするところからでも、まあいい、農業とは無縁だった人たちがちょっとでも土に触れる時間を持つようになればいいや、と。

だって、野良仕事の気持ちよさって、言葉じゃぜっっっったいに伝わらないんだもの。
わたしだって、こういう生活に引きずり込まれたからこそ、じわじわと、土の匂い中毒になっていったわけで、そうじゃなかったら今頃きっと、建築のことしか考えてなかったでしょう。
(わたしの人生をぶんぶん振り回してくれた自己中な夫に、パーシャルに感謝。)


「農家の倅の店」をやっている彼らはまさに農家に育ち、コアな部分を知りすぎたために「農業エンガチョ」になったヒトたちなのだと思われます。農家を飛び出し、東京での生活を満喫する中で、農家出身であることをアイデンティティとして打ち出して商売に結びつけるという発想は、この時代にぴったりフィット。
でもね、わたしにはなんだか物足りない。
セルフプロデュースが上手いなとは思うんだけど、農家からの直売のよさの、いちばん胸を打たれるところ(作り手の汗水を感じるところ)がごっそり抜け落ちてしまっているようなかんじ。むしろ、そこを隠蔽するかのように小ぎれいなイメージにすり替えて売っているように見受けられるところが「ピンとくるようでこない」原因かもしれません。
でもきっと彼らは、そうやってスタイルをつくらないと都会では受け入れられないと思っているのでしょう。で、実際、大多数の消費者にはその方がウケるのかもね。

わたしは逆に、ゴボゴボの手のおじいさんがゴボゴボに形の悪い野菜を新聞紙に包んで売っている姿の方が、カッコイイと思うんだけどね。
そうそう昔、朝早い山手線にカゴ担いで乗っていた行商のおばさんとかよく見かけたけど(今もいるのかな?)そのヒトたちがこの雑貨屋の前で野菜売ってるほうが、よっぽどありがたく思えて買いたくなるだろうと思います。

都会の中心で「農業をデザイン」して売っている彼らを店頭でじーっと見ていたら(ちょっとイヂワルな視線で)、ああホントに都会の空気が好きで、都会にいることが幸せなんだろうな、と思わせる雰囲気がムンムン漂っていて、なんだか売っているネギやにんじんにロゴマークでもプリントしかねない勢いを感じてしまった。
人間ってないものねだりね。田舎のヒトは都会をうらやみ、都会のヒトは田舎に憧れる。

でも売り場には、こんな文言が貼られていました。
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「嫁ぐなら農家」なーんて言っているということは、彼らもやがては田舎に戻って農家を継ぐことを想定(覚悟)しているということかな?
あとで調べると、彼らの多くはWEB制作などを生業としているようです。何気に農家やりながらでもできる仕事を選んでいるのかな?

彼らの頭の中をぐるぐるしていることが感じられて、結局ちょっと好感持っちゃいました・・・
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by babamiori | 2009-02-17 12:07 | 東京にて
外注だと1枚2500円くらいらしい。
あー、付き人のいる芸能人になりたい。

日常でやっかいなことに突き当たると、わたしはいつも反射的にこう思います。
パソコンがなぜか立ち上がらないとか、たかーいところにあってどうやってはずしたらいいのかわからない照明器具の中の電球が切れたとか、飛行機のチケットで思い通りの便がとれないとか、マメがいて荷物大量で雨降っていてどうしても銀座まで行かなければならないとか。

なんかそういう七面倒くさいことをしなくてよさそうじゃないですか~付き人のいる身分だと。よくわからないけど自動的に手配してくれている、みたいな。
別に芸能人でなくてもいいんだけどね、執事のいるような身分とかでも。
いやもっと言えば、すごくマメな夫がいてくれればいいのかもしれない。「うちのことは何でもやってくれるんです~あのヒトって」と自慢できる夫。
たまにそういう方をお見かけすると、思わず根掘り葉掘り聞いてしまいます。「お料理はできるんですか?じゃあアイロンは!?掃除機も!?奥さんが夜外出しても許しますか!?食事作って待ってるんですか!!へ~~~・・・スゴいな~~~・・・」と。

ご承知の通り我が夫は、超ウルトラ不器用。
けっこう手伝ってくれる気持ちはあるし、実際こどもたちの世話などは率先して引き受けてくれたりするのですが、どうしようもなく不器用。まあ本人のせいではないといえばないのですが。
だいたい手伝ってもらおうにも、スーパーで買い物したものを袋詰めすることもできないんです。(なぜって、レジ袋を開けられないから。)
汁物はこぼす、ワレモノは割る、上からモノをとると落とす、捜し物は見つからない、字はあまりに汚くてフツウに速記文字、それでも精神だけは清潔好きだったりきっちりしていたりするので、やりたいことが自分の能力をすぐに超えてしまっていちいち「あ~みおり~~~!!」とお呼びがかかる。騒げばわたしがやってくれると思っている。
そしてわたしは心の中で「こういうことぜーんぶやってくれる付き人が欲しい」としんねり考えている。(そういう観点で夫選びしなかったについてはあえて自問しないようにしている。)


と、いわゆるダメ人間なわたしたちなのですが、ひとたび三芳村に行くとなぜかけっこう働き者になってりしています。東京では外注するようなことでも、「いっちょやってみるか」とがんばってみる気になるんです。(そもそも外注するところがないんだけどね。)

田舎で暮らすヒトたちは、たいていのことは自分たちでやってしまいます。工具を直したり、お漬け物つくったり、家のメンテをしたり。そんなもんじゃなくて、都心だと「行政のやるべきことでしょ」と思われているようなことでも、自分たちで全部やる。溝の清掃、公道の補修や清掃、消防だってやってしまうというかやらねばならない。
そんな中で、「わたしじゃできないわ~業者に頼みましょ」なんて口が腐っても言えません。都会ではお金にあかして何でも外注する生活は楽ちんで優雅に見えますが、田舎では「生きる力がありません」と言っているようで恥ずかしいんだから、不思議です。

たとえば、障子の張り替え。

障子、ちょっと茶色いよな・・・と思わないでもなかったし、破れてるところが10カ所以上あるな・・・と知らないわけではなかったのですが、ま!こども小さいし!張り替えてもすぐにやぶれるさ!と自己弁護しながら先延ばししてたわけ。
(だいたいわたしの実家も夫の実家も外注タイプの家でして、障子を自分で貼っているのを見かけたことがなく、よくわからないから余計に億劫ってわけ。子供は親を見て育ちますから、そのあたりは注意せねばと思います。)

それが先日、ふと「障子くらい張り替えるかな」と思い立ち、カインズホームで障子紙と糊とカッターを買ってしまい、一瞬邪道かなと迷ったけど「障子はがし剤」というやつも買ってしまい、いよいよ張り替えに乗り出しました!

ところでうちの障子って何枚だっけ?えーと・・・
2+4+8+4=18枚。
けっこう多いな。でもはがして貼るだけだから、ま、半日ありゃできるだろ。

こどもたちに「これから障子を張り替えるので、特別に穴開けてよし!」と申し伝えると、そりゃもう大喜びで障子に向かい、人差し指でポスポスポスポス。
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ぐっちゃぐちゃにするかと思ったら、意外に整然と穴開けてました。
こういうデザインの障子なんです、と言われれば、そう見えなくもない。
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次に障子をはずしてそおっと寝かせ、「障子はがし剤」を桟に沿ってずいずいと塗っていきます。わたしがせっせとやっていたらこどもたちがうろうろまとわりついてきて、「ねーやらせてーやらせてー」とうるさい。
ニイニがやると障子紙の吸水キャパをはるかに超える量をぶじゅぶじゅと塗りたくるし、ポチンが塗るとか細い線でしかも桟から脱線してしまうしで見ちゃいられません。こどもの手伝いは自分だけでやるより100倍手がかかるというのが世の常人の常。
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充分に塗ったあと、はじっこから障子紙をそろそろと剥がしていきます。
わたしが剥がし残しなきよう丁寧にやっている脇で、こどもたちは「ウォーイ!」と一気剥がしで全面に剥がし残しが。
「あなたたちクビですクビ!」と蹴散らして、やむなくわたしが尻ぬぐい。はじめは濡れ布巾などでカスを剥がしていたのですが、濡れた障子紙の切れ端でしごくときれいにとれることを発見!見なさいママを。うまいもんでしょ。こうやってやりゃいいのよ。とぶつぶつ言うもギャラリーはもはや存在せず。言葉を知らないマメが脇で座って、よだれを垂らしながら聞いてくれました。

やっと2枚剥がしたぞ!
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障子も、桟だけになるとハッとするほど美しいものだなあ。
いっそこのまま貼らずに終えて、格子戸の美を堪能するのもいいかな、とチラッと考えましたが、我が家ではこの薄い膜の断熱だけを頼りにしているので、やっぱり貼らなきゃな。

桟の水分をとばしたら、こんどは糊づけです。
糊のボトルの説明を読むと「たっぷり塗ります」と書いてあるので、桟にこんもり乗るように塗っていきました。
図工の時間みたいなもんです。単純でけっこう楽しい。一人でやっていればね。
傍らにマメがいるという環境はそれを楽しむというゆとりなど微塵もなくなるということであり、いつの間にかごろんと寝っ転がってヒイヒイ泣き始めたマメに「もうちょっとで終わるからね~」と声をかけながら焦って塗るのはそんなに楽しくありません。
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だいたい、2時間くらいで全部終わらせてのんびり焼き芋でもしようと思っていたのに、1時間経ってまだ1枚目も張れていない・・・
18枚やると18時間かかるぞ。
見積もってた時間の9倍もかかるぞ。

そこに、ビニルハウスから夫が戻ってきました。
「お、やってるねえ」
やってるねじゃないよ。マメ見ててくれる?集中したいから。
「いいけど、ねえ、その作業オレが代わろうか?」

キタキタキタキタ!
楽しそうに見えたんでしょう、わたしのやってること。夫から「やらせてーやらせてー」というオーラが漂っています。

でもね、だーめ。だめだめだめだめっ。
あなたが張ったら糊はだらだら、紙はグニョングニョンになるのが目に見えている。大変だけどこれはわたしの仕事、あなたはマメ見てて頂戴。
「いや!これならオレだってできる。いいから代わろう」
え~。ホントにだいじょうぶ?
どんなに固辞してもやると言い張る夫に根負けしたわたしは、じゃあ・・・お願いね・・・と糊を渡してしまいました。

夫は、じとーっと見ているわたしの前でけっこう手際よく糊を塗り、なんだうまいじゃない!!と驚くと気をよくしたのか「紙だって張れるさ」とどんどん作業を進めていきました。
あー紙張るときはこのシールで紙を桟に止めるのよ、と教えても「いいの。オレはオレ流でやるの」といきなり障子紙を桟の上にころころと広げました。

ヒーーー大丈夫?!そういう手順を端折るとどこかでヘマするよ!!

というわたしの心配をよそに、これまた結構上手。ちゃんとピンと張れてる!
「どうだ。おまえがやるよりうまくできるぞ」
もう、鼻の穴なんて掃除機みたいに広がりまくりで得意満面な夫。
カッターを手に、きこきこと障子紙を切っていきます。
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わたしは、障子紙と格闘する夫を、ほぉーと思いながら見つめていました。

信じられない光景だわ・・・
なんもできないと思ってたら、やりゃあできるんじゃない!
フツウに手も指も動くし。
まっすぐ切れてるよ紙。
オレは不器用でやりたくても無理なんだと言っていたのはひょっとして、やりたくないから?
わたしは思わず同居の義母に電話して「今あのヒト、障子張ってます!!ウソじゃないんです!!」と驚きを分かち合いたくなったほど。

とそのとき、「みおり!なんかカッター台ないか?」とけたたましい声。
な、何に使うの?
「いいから早く!」
そんなもの持ってないので仕方ないからまな板を差し出すと、何やら必死の形相で障子紙を切り刻んでいます。
なにそれ?その5ミリ×5センチくらいの小さい短冊。
「なんかいつの間にか桟より内側切ってたんだよ。穴あいちゃうから補修しなきゃ」
見ると確かに切った線が脱線していて、うっすら隙間が。
張り替え前からもう、補修ですか。
しかもその後も口出しせずに見ていたら、何ヶ所も脱線して小さい短冊を張ってるし。

遠目で見ると、けっこうきれいなんだけどね。
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近づくとわりと、垂れてるけどね。
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・・・手作り感満載。

結局この日は、東京に戻るぎりぎりまでがんばって障子5枚しかできませんでした。
そろそろ雑草も生えてきたし畑もやりたいのに、あと13枚もいつ張ればいいんだあー!
(すでに全ての障子にこどもたちの指の穴があいてるし。)
あと数ヶ月で歩くようになるマメが、この苦労の結晶を穴だらけにしたとき、わたしは果たして怒らずにいられるだろうか??
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by babamiori | 2009-02-13 08:45 | 田舎暮らしのこと
そこらじゅうが卵だらけ~。
ふきのとうを探しながら下の畑を歩いていたら、こんなものが。
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「あー、もうカエルの季節なのね」
ぱっと見てそう断言したわたしに、ニイニがすぐに言い返しました。
「違うよよく見てよ。これはサンショウウオだよ」
棒でウリウリウリとかき回して引っかけて、ひとつ取り出しました。
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あら、つながっているのかと思ったら、切れてるわ。
この形はたしかに、うーん、サンショウウオの卵か・・・
「でもそれにしてはちょっとばかり長い気がしない?」
「うーん・・・」

夫と一緒に再び散歩に出たニイニは、今度こそサンショウウオに間違いないという卵を発見してきました。
これだよ、コレ。クロワッサン状のむにゅむにゅ。
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あーでも、さっきのやつもこんなもんか。


去年の春、ニイニがはじめて用水路で見つけたときは「こんなのがいる!!貴重だ!!」と大喜びだったんですけどね。
トウキョウサンショウウオ。
あの時とってきた卵は東京の家でちゃんと孵化させて、今でも12匹全部すくすく育っています。わたしが飼育担当なので、1匹1匹顔を見ながら生きたアカムシ(ボウフラ)をピンセットで口まで運んで食べさせてるからね。(目下、食の細い子が2匹いてちょっと心配なんだけど。)

でも、畑にこんなに、歩けば踏みそうなほどいると、正直なーんだあってかんじではあります。うちのまわりでは貴重でも何でもないもん。もしこの卵が全部孵化して全部育ったら相当コワいよ。きっとほとんど食べられちゃうんでしょうけどね。
サンショウウオって、水と木が両方ある場所にしかいないそうです。つまり、いくら水のきれいな田んぼがあっても、平地だといないらしい。
我が家は、田畑地帯と山林地帯の境目にあるので、おそらくジャスト産卵場所なのでしょう。サンショウウオ密度が本当に高い。(逆にサンショウウオからすれば「お!めずらしく人間がいるよ」ってなかんじでしょう。人口密度低すぎ。)

というくらいたくさんいるというのにニイニは、あと3日晴れが続いたら干上がってしまいそうな水たまりに産み付けられている卵を見つけると、かわいそうだからと田んぼの中に移動させていました。
見捨てられない気持ちは、分かる。飼うとかわいいからね、サンショウウオって。


そんなわけで、サンショウウオの卵はもう見分けられるぞ。
じゃ、これはいったい、なんだ???
b0128954_9243131.jpg

ヒィ!!!
わたしでも正視に耐えられない・・・

気持ち悪いけど拡大するよ!
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うひょー!なんかしっぽのはえたやつが入ってる!キモ!
でもこのくらい寄りで見ると、カワイイ気がしないでもない。
この中のやつは何なんでしょうか?
ニイニはカエルって言うんだけど、カエルの卵ってホースじゃなかったっけ?
こりゃ引き続き、行くたんびに要観察だな。

これがなんなのか、知っている方がいましたら教えてくださーい。
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by babamiori | 2009-02-10 09:27 | 週末の出来事
うるさいぞ竹!
「そろそろ寝るか。悪いけど、またやってくれる?」

夫が差し出すのは、黄色くて小さいスポンジ。
「しょうがないなあ」
わたしは夫の頭をぐいっと倒し、細くて深い螺旋状の暗闇にこの黄色いスポンジをねじ込みます。相当キリキリとこよっても途中ですぐに膨らんできてしまうから、やりにくいんだよなあ。
「これで大丈夫だ-。じゃー、おやすみー」
やたらと大きな声で布団に向かう夫・・・


三芳村のセカンドハウスでは必ず夫は耳栓をして寝ます。
別に、わたしやこどもたちのいびきがウルサいからではありません。
家の裏山の竹のせいなんです。

竹ってやつは本当によく伸びる。伸びる速度が半端ない。
のびてのびて、たかーくのびてしなった竹は、我が家の屋根にもたれかかります。
もたれかかるだけならまだいい。
風のある日はこれが、ワイパーのように左右に揺れるんです。

ちなみに、この家の屋根は波板。(昔は茅葺きだったらしいけど。)
なみなみになっている板を竹のワイパーがなでると、どういうことになるか?

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」「ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ」「ダダダダダダダダダダ」

工事現場もビックリの大音響が鳴り響く。
風がやむまで、鳴り響く。
間違いなく安眠妨害です。(それでも起きないわたしやこどもたち。)

「裏山の竹、なんとかしないとな。あと、家の下の斜面の笹も恐ろしいぞ。この家買ったときにはきれいに水仙が並んでいたのに、今じゃ背丈2メートル以上の笹藪だ」


一念発起した夫は、竹だの笹だの、刈った刈った。
がんばったぞ偉い!
b0128954_16163024.jpg

「よーし。じゃ、この竹を燃すのだけはよろしくな」

え~~~
けっこうな量だぞ。
まあでも、このまま積んでおくわけにもいかない。がんばるか。
b0128954_16171120.jpg

竹って面白いくらいよく燃えるんです。バチ!バチ!とはじけながら火力が弱まることもなく燃え続け、半日がんばったら全部灰になりました。
すっきりした~

気がつくと、シャベルを手にしたニイニが。
「この灰もったいないよ。竹炭っていい肥料になるって、パパ言ってたよ」
良くも悪くもケチなニイニは、ゴミ袋に灰を詰めてご満悦。
b0128954_16172738.jpg

よし、じゃ、この肥料使って今年はいよいよ畑がんばるか!!


・・・その日の夜。
今日は安眠できるぞと耳栓をせずに寝た夫。なのに・・・

「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」「ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ」「ダダダダダダダダダダ」

夫よ、どこの竹を刈っていたのだ?
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by babamiori | 2009-02-05 16:16 | 週末の出来事
好対照をなす家、2軒。後編。
たまに、三芳村のセカンドハウスの近くでオープンハウス(建築家が竣工直後に知り合いを招いて自作を公開する見学会)があると、とっても得した気分になります。

大抵オープンハウスって週末にあるし、週末といえば大抵わたしは三芳村にいるしで、せっかく案内をもらっても「どーせ行けないもん」としょげることが多いのですが(オープンハウスに限らず仕事や付き合いも限られます。だから週末に何かお誘いがあるといつも「それでも三芳に行きたいか?わたし」と自問・選択することになる。で、悩んだ挙げ句、結局ほとんど三芳を選ぶんだけどね。)ごく希に現地が房総の南の方だったりするオープンハウスがあると、超ラッキー!
野良仕事の間隙を縫って「ちょっくら行ってきます!」と勇んで出かけるわけです。

先日行ったのは、館山の住宅地でのオープンハウス。

しょっちゅう通っている館山バイパスをすっと逸れ、一本奥に入っただけで、見慣れない住宅地が広がっています。これって、南総里見八犬伝の城下町だから?と思わせる雁行した道には、立派な生け垣の広い敷地の家が並んでいました。うわ~もし東京だったら田園調布級の高級住宅地だよ~と言いたくなる。ぱっと見、敷地面積100坪級。建っている住宅はゴージャスでもなくフツウなので特別な感じがせず、ずっと見ていると「あ、これくらいの敷地って、家を建てるのに適正の広さなのかも・・・やっぱり20坪とか30坪に家を建てて住むって、窮屈な話なんだな」と思えてきます。東京だと、「敷地50坪?広いじゃん!」ってかんじなのにね。

そんなこんなに目を奪われているうちに道はどんどん狭くなり、いつものように、いつのまにか、迷った・・・

「おまえがちゃんと調べてこないからだよ!」と夫は怒り、「住所ナビに入れたけどナビがボロくてナビんないの!!」とわたしも逆ギレし、チャイルドシートが3つ並ぶ幅広の車で狭ーい道をジクザグ走るというストレスから「やっぱり軽トラじゃないといろいろ不便!!」と車にまでとばっちりがいき、結局にっちもさっちもいかなくなって「すみませ~~ん、近くまで来て迷っちゃったんですけど~~~」と村上さんに電話する羽目に。

そう、今回のオープンハウスは、三芳一の大工、村上幸成さんの設計した家です。

立派な生け垣の街区の隣の街区は閑静な新興住宅地で、建築中の家もちらほら見える中、その家はひっそりと完成していました。

一見簡素なんだけど、どことなく重みがあってお腹にずんとくるかんじ。
おそらく、軒裏の木組みの印象でしょうね。
b0128954_17401663.jpg

けっこう灰汁の強い家を見ることの多いわたしとしては、とても静かで簡素でフツウなかんじが、むしろ新鮮。この家からはウェブデザイナーとかフードコーディネーターとかファッションライターとかは出てこなそう。

「おじゃましま~す」
中に入るとすぐ、すっきりしたリビングダイニング。何よりも木が大好きな村上さんがつくる家だけあって、床も天井も建具も、すべて仕上げが無垢材です。
b0128954_17404446.jpg

部屋中にうちの庭でとれる水仙と同じくらい強い木の香りが漂っています。

「ああー、このにおい」

わたしの父の実家は7代続く材木屋なので、強烈な木の匂いを嗅ぐと小さい頃のいろんなことをうわっと思い出すんです。
「みんなで外で遊んでいらっしゃい」と外に出されても、信じられないくらい恥ずかしがり屋だったわたしはいとこともろくに馴染めず、ひとりで裏側の大工さんのたまり場にこそこそ逃げて、おがくずの匂いを嗅いで時間を潰してたなあ。とか。
自分の家にはこの匂いがしないけど、建ててからもずうっとこの匂いがすればいいのに・・・と思ったなあ。とか。

人知れずそんな感慨に浸りつつ中を拝見すると、中もとってもフツウの家。「お!これは面白いですね!」という目立ったデザインもなく、「この空間はなんとかをイメージさせる」といった抽象的な雰囲気もなく、本当に実直に、生活のうつわとしての空間があるんです。
ただふっと、きもちいいな、と思わせるものがある。

と、こどもたちが大きな声をあげました。
「あ!うちのトイレ!」
なに?と思って見ると、
b0128954_17412936.jpg

突き当たりのトイレの扉・・・あはは、うちのトイレの扉とおなじだ。ちなみに村上メイド。
「ははは、ばれちゃいますね。扉のデザインは、ぜんぶコレなんです」
知ってますよ村上さん。
だって村上さんの事務所の扉だってそうじゃないですか~

階段をのぼると個室が3つ並んでいて、上の方は空気がつながっています。
b0128954_17414884.jpg

こちらも木組みが見えて美しい。
そしてやっぱり、シンプルすぎるほどシンプルな内観です。

各部屋から出られるながーいベランダもすっきりと仕上がっています。
さっき外から見えた軒裏、アップで見てもやっぱりきれい。
b0128954_1742213.jpg

「いいでしょー、軒裏。きれいだよねえ」
軒裏を見ているときの村上さんは思いっきりにこにこしていていちばん得意そうです。自画自賛しても嫌味じゃないんだからなあ。いい性分だわ。

ところで村上さん、些末なことで恐縮ですけど、木組みにこだわっているんならやっぱり、エアコンとかは美観を損ねるからどこかに収納してあるんでしょうかねえ?
「あー、いや、まだつけてないです」
へ?うちとおんなじで、空調なし?
「いやいや、これからね、お施主さんがつけるんで。量販店で買って」
・・・す、すごいこだわりのなさ。
じゃあ、このすっきりとした空間にボンと、丸出しで、つけちゃうんですね。
「やっぱり安いしね。量販店でやったほうが」

村上さんと話していると、ホントに調子が狂います。
いわゆる建築家がこだわりそうなところをとってもあっさりと処理していて、手間をかけていない。設備系はまったくどこにでもある既製品だし、空間構成も「いいの?」ってくらいあっさり。それについてはちょっぴり指摘しても、「そうね」とかわされ、気にもしていない様子。

そのかわり、家をつくるベーシックな部分、つまり木材とその構造については、驚くほどこだわっているんです。
いただいた説明書きの紙を見ると、デザインについてはほとんど言及しておらず、そのほとんどがこの家で使われている構造材「樹齢80年以上の千葉県産の天然乾燥材」の素晴らしさと、寺社のように金物に頼らず木組みでつくる方法の詳細が書かれています。

さすが、数寄屋建築をつくる親方に弟子入りしていた大工さんだけのことはある!


そういえば、この家に入ってからなんとなく感じていた「いいかんじ」の正体ですが、これっておそらく、家の中で木組みが見えていることなんだろうと思いました。

よく、建築中の現場を外から見ていて「家の骨組みって美しいな-」と思うことがあります。壁や天井で仕上げないで、このままのほうがずっとずーっと魅力的な空間だろうにって。それでもほどなく外壁のサイディングがぱかぱかっと貼られて、あっという間にプラスチックペカペカハウスができちゃうんだけどね。
そうするともう、中に美しい木の骨組が入っていることが信じられない。

この家は、まあ、ぶっちゃけ地味な空間なんですが、しっかりと職人がたてた家の安心感と心地よさがそこはかとなく漂っています。驚きはないけれど、木組みの美しさを見るとこの家をつくった大工がこれを愛して、楽しんで、ひたむきにつくったことがよく分かる。

それにしても前回触れた住宅とはまったく異なる志向の家です。
あっちとこっとどっちがいいか?そんなのは無意味な質問。
いろんな施主がいて、いろんな設計者がいて、だから住宅は奥が深いのであります。(浅はかなまとめですみませんが。)


何とも言えない感慨を胸に家を出ると、同伴した夫はマメと一緒に先に車に戻っていました。
「付き合い悪いなー。なんで先に出ちゃったの?」
ちょっとムッとして言うと、夫はバツが悪そうな顔でこんなことを言うんです。
「あのさあ、木の匂いが、強烈すぎて・・・オレ、木の匂い、ちょっと苦手なんだよ」

ヒエ~~~!!
そういうヒトも世の中にはいるのね・・・
わたしにとっては恍惚の香りも、夫にとってはツラい匂い。
だから住宅って、難しいですよね。
多数派の意見でも、施主にとってはNGってこと、あるからねえ。
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by babamiori | 2009-02-02 19:00 | 建築について



ひょんなことから、南房総に8700坪の土地を手に入れてしまいました。平日は都心で建築ライター・コーディネーターとして働き、週末は南房総で野良仕事。ちょっとムリして始めてみた二重生活ですが、気付けば主客転倒で、どっちがメインの住まいかわからなくなっています。田舎暮らしの衝撃と感動、苦悩と快感をそのまま綴ります。 ニイニ中3、ポチン5年、マメ1年。

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