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きーちゃん、生まれた空のもとへ。
夕方くたくたになって家に辿り着き、まだ明かりのついていない玄関ポーチから和室の窓を見上げて「今日もきーちゃん元気だったかな」と思うのが日課になっていたわたし。

室内でも外と同じようにと常に窓を開け放ち照明もなるべくつけないようにしていた和室は、今なら18時にはすでに真っ暗です。鳥かごの中や台所の隅っこで置物のように座り込んでいるきーちゃんは早々とおやすみモードでぽーっとしていることが多いのでした。「ただいま。ああまた水こぼしちゃったの」などと独り言のように話しかけながら、羽を膨らませてシューシュー威嚇音を出すきーちゃんに新しい餌と水を与える時、わたしの一日は安堵感に包まれた終わりを告げます。
今日も、この子を守れた。良かった。って。

そんな癖はまだ抜けず、帰ると和室を見上げてしまいます。

真っ暗な部屋の中にいる愛しい命を思い、と心が温まりかけたところで「あ・・・そうだった。もういないんだった」と、気付き、呆然と立ち尽くす。

こどもが結婚して家を出たら、親はこんな放心をしばらく味わうんだろうな。



先週末、キジのきーちゃんを放鳥しました。
雨続きの秋なのに、その日の朝は青く高く晴れ渡った空で、絶好の放鳥日和でした。

きーちゃんはいつものように、中で暴れて怪我をしないように真っ暗にふさがれた箱に入れられ、東京の家から運ばれてきました。
車の中では「今日できーちゃんとお別れだね」というコトバは、あまり誰も、言いませんでした。「どこで放す?」「山の方が隠れる場所があって安全じゃない?」「いやーキジは田んぼや畑にいるものでしょ」とがやがや相談し、つとめて明るい雰囲気にしていたわたしたち。
だって、これは喜ぶべきお別れだから。

考えてみると、ペットと死別以外の別れをするというのは、魚の放流くらいしか経験がありません。ニイニは数々の川魚を卵から育ててはもとの川に放してきました。もちろん魚には感傷など欠片もなくあっという間に視界から消えてしまうのですが、放した後のニイニはその魚が見えなくなってもなお姿を追うように水面を見つめ続けるのでした。
あとは犬のぴょんきちにせよ、オウムのミリィにせよ、数え切れないほどの虫や魚にせよ、こどもの頃わたしが飼っていたシャム猫のミミ、ハムスターのシロとチャアとそのこども8匹にせよ、すべて死別。お墓に埋めて手を合わせることで、悲しい心に折り合いをつけてきました。

だから放鳥というセレモニーは、一体どうやって受け止めていいやら多少戸惑いました。
手元からいなくなる寂しさと、もといた場所に放すことのできる達成感と、きーちゃんの無事を願いいつまでも心配が消えない親心とがごちゃまぜで、どんな顔をするべきか分からない。

それはわたしだけではなかったようです。
家族みーんなちょっと神妙で、ちょっと口元に笑みがこぼれ、でも目元が悲しげで。
家族みーんな、我が子を嫁に出す日の父のような顔。


畑の真ん中に、きーちゃんを運んできました。
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ここで生まれた、きーちゃん。

14この卵から3羽だけが孵り、ほどなくじーちゃんを看取り、そして3ちゃんを看取り、さいごに残ったきーちゃんだけ無事に三芳の空に返すことができたわたしたち。

こどもたちに「じゃ、開けるね」と告げ、そろそろと蓋をはがし、中でじっとしているきーちゃんに声をかけました。

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「ほら、ひろーい空だよ、元気に飛んでごらん!!」

きーちゃんは、いきなり明るみに満ちた箱にびっくりしたのか、顔をちょこんと覗かせる間も見せずにいきなり弾丸のように飛び出し、ばさばさばさばさっっっ!と飛んでいきました。

そして空に向かって高く飛ぶのかと思いきや、なぜか紙飛行機のように横方向に突っ切って、近くの竹林に突っ込みました。

「きーちゃんどうした」「墜落したか?」

みんなで竹林に走る!

すると「あっそこでごそごそいってる!」とニイニがさっそくきーちゃんを発見。
もう二度と見られないと思ったのに竹林の中であたふたしているきーちゃんを再度目にすることに。。

でもすぐ、またばたばたばたっと不器用に飛び上がり、今度は本当に、下の田んぼの方に飛び、ふと見えなくなりました。刈り入れ後の田んぼに着地したか、あるいは黄色いセイタカアワダチソウがそよぐ土手か、いやもっと奥のとうもろこし畑まで低空飛行していったかもしれません。すいっと、視界から消えたのです。

「あー・・・行っちゃった」

・・・ほんとに、行っちゃった。

和室の中しか飛んだことのないきーちゃんが、三芳の空のもと、自由になった瞬間でした。

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放鳥記録を撮るんだと張り切っていたニイニは、カメラを首にぶらぶらと下げたままきーちゃんを必死で追いかけており、気がつけばきーちゃんの姿は1枚も撮っておらず。
「だって・・・きーちゃんの飛ぶ姿に、見とれちゃったんだもん」とつぶやくと、とぼとぼと家に戻ってしまいました。

その日は念のため、くろとぴょんは半日家の中に閉じ込めておき、身内がいちばんに襲うという悲劇を阻止することに。でもきーちゃんはどうやら我が家の近くにまだいるらしく、翌日ビニールハウスの近くを横切ったという目撃情報がありました。
どこへでも行くことのできる立派な翼を持っているのに、意外にだらしないもんだなあ^^

でもいいんだよ。
このままうちの畑に住み着いてくれて。
それでたまに「ケーン!その節はどうも!」とひょっこり顔出してくれるのがいい。
ま、家にいても3歩歩けばわたしの存在など忘れてしまうきーちゃんが、覚えていてくれるはずないんだけどね。

畑を耕していても、デッキから山を眺めていても、この風景のどこかにきーちゃんがいるんだろうなと思うだけで、何だか、胸がじんとします。

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きーちゃん、今日も元気かな。

今日のような寒い雨の夜は、どこでうずくまっているんだろうな。
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by babamiori | 2010-10-28 17:39 | 生き物について
・・・ついに、南房総リパブリックが?
週末になると東京の住宅街から南房総リパブリック!にどっこいしょっと移動し、平日のケンチク+パソコンの生活とはかけ離れた里山生活を送るというライフスタイルとなって、そろそろ4年経とうとしています。
月日が経つの、はやっ!!

4年前・・・あの頃はまだマメも生まれてなかったし、今よりプリプリ肌だったなあ~

なんてレベルのコトは思い出せるのですが、1年中都心にいたそれまでの生活ってどんなだったか、うーん、、、あんまり記憶にない。
まあ、さらにその何年か前から週末といえば土地探し行脚をしていたわけだから、それ以前となると週末は幼いニイニを連れて珍しい電車に乗りに行ったりして過ごしていたかも。(ニイニは重度のテッチャンだった。)

南房総にセカンドハウスを持ってからの生活があまりに濃くて、時間の長さは平日5対週末2なのに過ごしている密度感としては五分五分なかんじ。「やっぱりあれですよね、自然の中に身を置くと都会のあくせくした空気と違ってリラックスするでしょう?」とよく聞かれますが、このブログをお読みいただいている方ならすでにご承知のとおり、ひょっとしたら南房総にいる時の方がよっぽどあくせくしている。日があるうちはせっせせっせと野良仕事、コーヒーブレイクの暇さえ惜しみ、日が落ちればテレビも見ずにバタンQという体力勝負な週末です。

でーも。

やめられないんだな、この生活が。

それは楽しいからか?
いや、厳密に言うとちょっと違う。
わたしはきっと死ぬ時がきたらホッとするだろうなと最近よく思います。とにかくあっちゃこっちゃで抱えているノルマや問題がいっぱいある状態で、「今週中にネギの種蒔かないと間に合わない」「入り口の草刈りもうやんないと」「土砂で排水が詰まったみたい」「イノシシがついに我が家にも来たって?」「カメムシ駆除どうするよ」など都会に住んでたらいっこも関わらないでいいことがどばーっと押し寄せてくる。
一般的には、楽しいってこういうことじゃないはず。

つまりそんなにいろいろ大変なこともあるのに、なぜわたしがこんな生活を続けているかというと、いくらなんでも人生を積極的に嫌なことに使うほどお人好しではないので、やっぱりこのライフスタイルが、気に入っているわけだ。

気に入っているというのも、また厳密に言うとちょっと違うなあ。

都市に住むなら、心身のバランスをとるために、どこかで「田舎」を摂取することが必要、というかんじ。

・・・学生時代、設計課題提出の前に製図室に泊まり込んで、眠気覚ましにチョコとかコーヒーとかコーラとかお腹が空くとカップラーメンとかを食べ続けていると「なんか体がヤバイ」という感覚が出てきて、気休めにトマトジュースを飲んだりしてました。家に帰ると「野菜野菜野菜!おひたし作って!」と叫んで母にたくさん作ってもらい、ニラとかほうれん草とか一気食いしてたなあ。。
栄養バランスを考えてというより、ホントに体が欲求している実感がありました。

わたしにとって田舎暮らしって、その、おひたしの部分な気がします。
恍惚感のある美味しさはないけど、食べると体が喜ぶ気がするもの。だから食べちゃう。
で、やっぱりフワフワしたレタスじゃ足りないの。おひたしなの。というかんじで、近くの公園ではなく田舎なのです。
こどもたちと過ごす時間の濃密さを考えても、砂場遊びより山菜探しでしょう!ゲームよりサンショウウオの卵でしょう!プラネタリウムよりリアル満天の星でしょう!と、心の底から思う。

・・・そんな自分自身の感覚や、子育てについての考え方から、やっとやっと4年経って「二地域居住、かなりオススメ」と胸張って言えるようになりました。

以前カーサブルータスハーパースバザーで取材された時にはまだ、その確信が持てなくて、自分の生活つくるので必死っす!!だいたい一般的なライフスタイルじゃないし。と自らを異端児扱いしていたと思うのですが、つい先日、房総R不動産の取材を受けた際「あ・・・ちょっと心に余裕できたな」と感じた次第。


さらに。
わたしたちがセカンドハウスを持って得た子育て環境や農業体験、あるいは心身に効く気がする「おひたし」の部分をたくさーんの方々に味わってもらいたいと思うと同時に、わたしたちがどっさり抱え込んだ「めっちゃ苦労。。」「この出費痛すぎ。。」などの中で取り除ける部分はないだろうか?特権階級だけが享受できる別荘生活とは全然違う、もっともっと生活や教育のコアの部分を持ってきてしまうような田舎暮らしを、多くのヒトに供給する方法はないだろうか?と、頭をひねりだしました。
もっと安価に、もっと不安なく、「マイカントリー」が持てる環境があれば、もっともーーっと胸張ってオススメできるのになあ・・・と。
(もっともっとってなんか安売り家電のCMみたいですが。。)


さらに、さらに。
自分が住むようになって我が事のように問題意識を持つようになった、里山保全の問題、中山間地の限界集落化への懸念なども放っておけず、同時進行で考え中。
目下名古屋で開催中のCOP10(Conference of the Parties)で日本が提案し採択された「SATOYAMAイニシアチブ」が世界的に注目されていますが、ここでキレイな言葉で謳われている文言のひとつひとつが、わたしにとっては具体的に直面する課題だったりするんです。

いや~~、時代はSATOYAMAかあ!
ついにローマ字になっちまったよ!

などとふんぞり返っても何も生まれないので、ここはいっちょ、立ち上がっちゃおうかなあと思っている次第です。
計画、ホントにたてちゃうぞ!

名付けて「(仮称)南房総リパブリック!計画」。

・・・とりあえず決まったのはここまでだ。
ハハハ。
決まっていることさえ仮とは。


わたしのやりたいことは、
★なるべく多くの人がセカンドハウスを持てるシステムを考える。(二地域居住推進)
★たった数年しかない子育ての黄金時代を濃厚に過ごす場をひらく。(継続的な田舎体験)
★魅力的な里山を耕作放棄地だらけのお荷物にせず、創造の場として活用。(里山保全)
です!(きっぱり。)

動き出してまだ日が浅いので、ご報告できるレベルのものは用意されていないのですが、とりあえず旗揚げだけしてみました^^
これからはたまーに中間報告なども織り交ぜていく予定ですし、すでに巻き込んでいるあの方この方からも、いずれ活動報告が出てくるかと。
楽しみに待っていてください!


もし、セカンドハウスを持ちたいと思っていらっしゃる方や子育てはやっぱり田舎がいいよねーなどと考えていらっしゃる方がいらっしゃいましたら、「でも実際はここが問題」「できればこんなことをこどもと一緒にやってみたい」「うちならこんな場所が欲しい」など具体的に思っているコトを、寄せていただければ嬉しいです。提案、批判、期待、参加表明!なんでもいいです。ブログコメントでも非公開コメントでもメールでもかまいません。ご意見を多くの可能性と問題点を知って取り組みたいと思っていますし、そんなやりとりで生まれたご縁も大切にしたいと思っています。


ここまで写真もないのに長々とご拝読、ありがとうございました。

今週末も、親は野良仕事、こどもたちとネコたちは野良遊びだな。
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そしてキジは・・・
次回にでも、そのことを。
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by babamiori | 2010-10-22 11:44 | 田舎暮らしのこと
きーちゃんと3ちゃんの、その後。③
前回のつづきです。

今、我が家の和室には、きーちゃんが棲んでいます。

3ちゃんが死んでしまった後、ネコとの同居はやっぱり危険だと一瞬きーちゃんの里親を探しかけましたが、受け入れてくれそうなのは養鶏場がほとんど。卵も産めないきーちゃんを預けるにはあまりにも不安な場所だということと、「1羽なんだから放鳥まで飼ってやろうよ」とどこかで思ってしまうところもあり、結局、和室の主のままです。

臆病で人馴れしない性格はそのままで、毎日毎日毎日わたしが「きーーいーーーちゃんっ」と声をかけているにもかかわらず今日もまだ「フガァ~~~~ッ!!」と羽を広げて威嚇しています。その警戒心には笑ってしまう一方で、これならマヌケにのこのこ敵の前に身をさらさないだろうなと安心感も感ずるところ。
「ふがふが言ってないでさあ」と野菜やとうもろこし、虫などをほいと与えると、テテテトトトと行きつ戻りつしながらも餌に近づいてあっという間にたいらげます。それがかわいくて、マメはいつもわたしと一緒に「きーちゃんのばっちっちのとこいく!」とついてきます。

そう、、、
もちろんご想像のとおり、和室はえらいことになっています。。
ほーんとばっちっちなんだこれが。

畳や板の間の上にはところかまわず糞をするきーちゃん。
コロコロウンチの時だけではなく、体調によってはベッチョリウンチになることも。しかもそれがコールタール並みに黒い。拭いても拭いてもどす黒い跡がのこってしまいます。毎日がんばって掃除しても空しいほど、もうどうしようもなく汚い部屋になってしまいました。

きーちゃん卒業後にはニイニの部屋になるんだから、リフォームの時キレイにしよう!と思いつつも、これじゃあまりだ、、と、大きなカゴを設えてみました。
犬猫が飼えるほどの大きさがあるので、まだ成鳥ではないきーちゃんなら大丈夫かなと。

がしかし。

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外出多し。。
やっぱり窮屈なんだよね、カゴの清掃時に必ず飛び出し、部屋の中でばたばたばたっ!!!と一回り羽ばたいた後、テテテテテテテテと走って所定の位置に向かいます。

それがなぜかここ。

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生前この和室をマイリビングとし、体調の許す限りこのミニキッチンに立ち、煮豆や葛きり、あんこを作っていた90歳の義祖母が見たら、こりゃ卒倒するでしょう。というかすでに天国で卒倒してると思います。(おばあちゃま本当にごめんなさい!)


日中は日の当たらないこの白い台の上にチンと座っているきーちゃん。
わたしが顔を出すと、落ち着かない様子で右往左往します。

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長い尾が凛々しく、野鳥ならではの毅然とした姿。
と、言いたいところなんですが、挙動はいつもオドオドしていてまったく毅然としていません。ふだんは物陰に隠れてじーーーーっとしていて、気配が近づくと小刻みに走って逃げる。そんな習性です。
和室、けっこう広々と使えるんだけどなあ。
狭いキッチンにいるか、低い机の下にいるか、どっちかだもんなあ。

しかも実は、今、きーちゃんは、

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ザビエルです。

脱毛タヌキの次は、円形脱毛キジかよ!って^^

これは、週末の三芳村移動の際、小さな箱に入れられて搬送されるため。びっくりすると垂直に飛び跳ねる習性を持つキジは天井に頭をぶつけてしまうんですね。それが分かっていたので蓋は紙でつくっていたのですが、度重なる摩擦によってハゲてしまいました。
もう、この姿、カワイくて笑っちゃうのですが、ハゲタカならともかくハゲキジってやっぱり切ないので、最近ではもっぱらお留守番です。

さて。

きーちゃんですが、もうすぐ放鳥します。
全日本雉類研究会の伊藤正さんからのご助言を受け準備に入ります。

5月から約半年も家族として過ごしてきたきーちゃん。
はじめは14この卵、兄弟3羽。すぐ2羽になり。
今、ひとり。

でも、だから、とっても強い子だよ。

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きーちゃんが東京の住宅地にある和室を飛び出し、南房総の青空に解き放たれる日は、もうすぐです。
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by babamiori | 2010-10-15 13:36 | 生き物について
きーちゃんと3ちゃんの、その後。②
前回のつづきです。

家に着いたら、泣きじゃくった顔のニイニがよろよろ出てきました。

「ひどい状態だよ、3ちゃん立つことができなくなってるよ、早く病院に連れて行こうよ」
1階のリビングに入ると、床には3ちゃんの羽が無残に散乱していました。
いつもと変わらずこちらを見るくろとぴょん。
くろぴょんただいま~!元気だった~?と声をかけることができず、息を飲むわたし。

ニイニによって和室に隔離保護された3ちゃんを見ると、前につんのめるような状態で座っていました。わたしが行っても、動くことができない。
部屋にはリビング以上の量の羽がちらばっていました。
あわてて抱き上げタオルでくるむと、ぐったりとなされるがままになっている3ちゃん。
3ちゃんの腹部には出血の跡があり、じっと開けた目がたまにすうっと閉じます。「起きて3ちゃん!元気出して!」と抱きしめてさすってやると、また目をあけて、微妙に首を動かします。


わたしは思わずじーちゃんの最後を思い出しました。
奇形で体に自由がなかったじーちゃんでさえ、死ぬ前日までは足にも羽にも意志が漲っていました。行きたくないところには行きたくない、抱かれたくないときは抱かれたくない。そんな気持ちを全身で表していました。
本当に、動けなくなったのは、最後に抱いたあの日だけでした。
じーちゃんの体温と命がわたしの手のひらに染み込んでいき、同時にじーちゃんから体温と命が抜けていく感触が、とてもこわかった。「ダメ!ちゃんとしてじーちゃん!ちゃんと生きて!」と息を詰めて念じつづける中、目を閉じ、足が伸び、すうっと軽くなったじーちゃん。

3ちゃんを胸に、あの時の無力さが蘇ってきました。

「きーちゃんは?」ニイニに聞くと、「生きてるよ、傷もないよ、机の下にいる」。
警戒心の強いきーちゃんはどうやら逃げ果せたようで、机の下に隠れたまま神経質に足踏みをしていました。
よかった・・・生きてた!
守られていたはずのじぶんたちの住処に敵が侵入し兄弟が襲われた恐怖からか、いつもより更にびくびくしているきーちゃんに「大丈夫よ、大丈夫よ、あなたはここで待っていてね」と声をかけ、部屋を暗くしてしっかりと扉を閉めました。

・・・この扉を、ネコが、開けたのか。

くろとぴょん、とは思わず、「ネコ」と思うわたし。
憎らしいはずの敵が、かわいいかわいいくろとぴょんだなんて。


保育園にいるポチンとマメをかっさらうようにピックアップし、3ちゃんを抱かせたニイニを助手席に座らせて、じーちゃんの時にお世話になった「横浜小鳥の病院」へ向かった時は、18時をとっくに過ぎていました。「急患ですね、いいですよ、予約なしでいいからすぐに連れて来て下さい」と言っていただいたのを頼みの綱に、美しい夕焼けの中、第三京浜を疾走。
隣のニイニに「3ちゃん生きてる?」と1分ごとに聞き、「生きてるけど目が閉じちゃう!」「生きてるけど元気がないんだよ!」と悲鳴のような返事が返ってくるという緊張した車内。「3ちゃん大丈夫?」「ニイニにはわかんないよ!」「でも生きてる?」「生きてるけど・・・ママ早く病院に着いてよ!!」
そんなやりとりを、何十回繰り返したでしょうか。

と、突然「あっ・・・3ちゃんが暴れる!ママどうしよう!」とニイニが叫びました。
タオルを押しのけ、羽をばさばさと動かす3ちゃんに、ニイニの手が緩みます。
「ひょっとして元気になったの??」と思わず明るい声を出すと、「でも押さえきれない~」というニイニの声と同時に3ちゃんが車内に飛び出し、バタバタバタバタとはばたきました。

「うわ!!どうしよう!!ニイニにはつかまえられないよ!!ママどうしよう!!」
「いいからつかまえて!ママ運転中だから手が出せない!」

3ちゃんは、天井に届きそうな高さまで全身の力で羽ばたくと、そのまま、ばさっと下に落ちました。

助手席のニイニの足もとで、突然動かなくなる、3ちゃん。

今だとばかりにあわてて3ちゃんを抱き上げた直後、えっ・・・と動きの止まるニイニ。

「ママ、、、ママ、、、、3ちゃん動かない。今死んじゃったかも」

「うそでしょ?」

「ほんとだよ、、、ほんとだよ、、、3ちゃんぜんぜん動かない。首がぶらぶらなんだよ。
ああそうだ、ニイニが・・・ニイニが拾い上げたとき、首折っちゃったのかもしれない・・・どうしよう・・・どうしようママ・・・そんなのやだああぁぁーーーーー!!」

ニイニの号泣が、車に響きました。

「ニイニが殺したんだ、ニイニが殺したんだ、せっかく生き返ったのに首折って・・・ニイニが3ちゃんを殺したんだ・・・!」

3ちゃんを抱きかかえ天を仰いで号泣するニイニ。目をやると、ニイニの手の中で絶命している様子が、はっきりと分かりました。

「ニイニ、あなたが殺したんじゃない。今のは最後の羽ばたきだったんだよ。ニイニは助けようとして、がんばっただけだよ。泣かないで、とにかく病院まで行こう」

ニイニのせいだ、ニイニが殺したんだとつぶやきながらおいおい泣き続けるニイニには、わたしの声はほとんど届いていないようでした。



じーちゃんの主治医の先生は、3ちゃんの亡骸を、とても丁寧に診てくださいました。
「これは多分、首が折れたんじゃなくて、この首の傷が致命傷だったんだよ。きっとネコに振り回されちゃったんだね。一生懸命来てくれたけど、残念ながら、もうお亡くなりになってますね。」
こどもたちとわたしは、だまりこくってうなずきました。
「もう1羽、いらっしゃるんでしょ?何かあったらまたご相談下さい」
ぼんやりしているニイニのぶんまで、ありがとうございますと深々頭を下げました。


真っ暗な帰り道、3ちゃんの亡骸を抱きながら助手席で泣き寝入りしてしまったニイニ。一方わたしは、渋滞の中をとろとろと運転しながら、朦朧とする頭でずっと考えていました。

誰がリビングをあけたんだろう?
誰が、キジ部屋をあけたんだろう?
どっちもネコとは考えにくい。つまり、誰かがきちんとドアをしめなくて、そこからネコが脱走して、悲劇が起こった。
誰のせいだろう・・・

でも。
誰のせいかを特定することに、意味があるんだろうか?
責任をひとりになするのは正しいのだろうか?
そもそも、この飼い方そのものに無理があったと、考えるべきじゃないだろうか。
喰うものと喰われるものが同居する危険を押して、キジを飼い始めたことに。
さんざん注意していたのに、注意しきることができなかった。
そして、きーちゃんと3ちゃんを、とんでもなく怖い目に遭わせてしまった。3ちゃんの命を奪ってしまった。自分のもとで大きくすると誓っておきながら。

ならばあの時、見つけた卵を放置しておけばよかったのか?
・・・ひょっとしたら、それがよかったのかもしれない。
そうすれば、こんな不幸はなかったんだ。


次の日、保育園の先生から「キジの話をポチンちゃんから聞きましたよ」と言われました。
ポチンは「キジがくろとぴょんに殺されちゃったの、でもネコはどうしてもキジを食べちゃう性格だから、悪いのはドアを閉めなかった人間なんだよ、ネコは悪くないんだよ」と、泣きそうな顔で必死に説明したそうです。


その週末、三芳村で3ちゃんを埋葬しました。
じーちゃんの眠る、あの木の根元に。
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じーちゃん、天国から3ちゃんに手をさしのべてください。
ここは、怖いことなどないからね、って。




こうして我が家には、こわがりのきーちゃんが、ぽつんと残されました。

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(つづく)
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by babamiori | 2010-10-12 12:53 | 生き物について
きーちゃんと3ちゃんの、その後。①
きじの、きーちゃんと3ちゃんについて、ずっと書かずにおりました。

あまりに重たい話題で、どこからどうやって書けばいいのか分からず・・・ご報告から逃げていたようなものです。

どうしてる?
元気?
まだいるの?

いっぱい聞かれ、うーんいろいろあってね・・・とごまかし続けてきました。

でも、意を決して書きます。孵化する前からずっとみなさんに励ましていただき、ここまでやってきたことへの、責任を果たさねば。

何回かに分けて書くことになりますが、どうか最後まで読んで下さい。


キジのじーちゃんが奇形で生まれ、1ヶ月で絶命した後。
我が家では、以前にも増して残された2羽のことを大切にするようになりました。
和室は完全にキジ小屋となり、きーちゃんと3ちゃんは自由にその中を飛び回り、優雅に窓辺でひなたぼっこをし、キジとしては一風変わった都会暮らしを満喫していました。(少なくともそう見えました。)
キジ部屋の前には、こんな貼り紙が。
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同じ家に喰う者と喰われる者が同居することから、細心の注意を払ってネコとキジの棲み分けを守らねばならないという状況。
ネコの棲む1階のリビングと、キジの棲む中2階の和室は、ぜったいにドアを開けっ放しにしない!というルールは家族全員でガミガミ言い合いながら死守していくことに。2歳のマメも、「にゃんにゃんがにげちゃうよ!」と自らドアを閉める癖がつきました。

きーちゃんと3ちゃんは性格がぜんぜん違い、危なっかしいほど人なつっこかったのは、3ちゃんでした。
警戒心が強いきーちゃんは人間が部屋に入るとテレビの後ろに隠れてしまうのですが、3ちゃんはのこのこやってきて「おいしいもんちょうだ~い」と畳をつつく。「そんなんじゃ、自然界ではやっていけないよ!本能で逃げなさい」と諭しながらもかわいくてついつい、手から餌をやって鼻の下をのばすわたし。
ずっと小さいまま、こうやってうちで過ごせればいいのになあと思いながら、野生動物に触れることのできる感動は色褪せぬまま、この手で育てる幸せをかみしめていました。

動物好きのマメはママと一緒にキジ部屋(=和室)に行くのが大好きで、「ぴよぴよのばっちっちーのおそうじいく!」と階段をよじのぼって、「き~~~ぃちゃん!さぁ~~~んちゃん!」と頭のてっぺんから猫なで声を出し、小さな手に餌をこんもりのせて食べさせてやろうとしていました。(実際は、異様に鼻息の荒いマメには2羽ともなかなか近寄らず。)


わたしがもっとも好きだったのは、夜の姿でした。
兄弟で身を寄せ、まるで置物のように窓辺に座って、車が通るのを眺める風情。

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外の世界を知らず、この室内で育つ2羽。
なんてかわいらしいんだろうと胸がきゅんとなるのですが、それはどうしても不自然に見える光景でした。纏足した少女への憐憫のような感情が沸き起こり、「拾って育てるという判断は間違っていたのか」と自分自身のエゴと対峙する苦さを感じてしまうのでした。

そんな飼い主の葛藤など知らずにきーちゃんと3ちゃんは日々よく食べ、羽にうっすらと玉虫色の輝きが見られるようになり、3ちゃんよりちょっぴり大きなきーちゃんがたまに「ぴーよっ!ぴーよっ!」と鳴くことで、ああこれはケーンケーンに変わる声だからきっとオスだなと分かるようになり、すくすくと大きくなっていきました。
セカンドハウスにも毎回一緒に来て、網戸越しに感じる三芳村の木々のざわめきや空気の匂いに全神経を傾ける2羽に、「将来はここで暮らすんだよ」と言い聞かせていました。


そんな、ある日。

仕事からの帰り道、携帯電話に着信がありました。
学校から帰ったニイニからでした。

「ママ、どこにいるの??早く帰ってきて!!」

ほとんど泣き声のニイニ。

「どうしたの?何があったの?」
「大変だよ、どうしよう、3ちゃんがクロとピョンにやられてる!!部屋のドアが開いてたんだよ!!もう、3ちゃんぐったりして動けない・・・早く病院に連れて行って!!」

途中から泣き崩れてしまうニイニに、わたしは思わず「なんですって!」と叫んでしまいました。「3ちゃん死んじゃったの?まだ生きてるの?どうなのニイニ!どうなのよ!!」

「まだ生きてるけど・・・もう動けないんだよぉ、座っちゃって動けないんだよぉ!早く、早く病院に連れて行ってよ!じーちゃんが見てもらってた病院に、ママ早く!!」

わたしは震える手で携帯を持ち直し、「わかった。今からすぐ帰るから3ちゃんをタオルでくるんで待っていて」と伝え、重たい鞄を小脇にぎゅっとかかえて走り出しました。


想定しうる中で最悪の事態が、起こってしまったのでした。

(つづく)
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by babamiori | 2010-10-08 16:43 | 生き物について
ニイニのブログ①
にいにです。
僕は小学4年男子です。
趣味は野球と自然観察と釣りです。
これからもちょこちょこ南房総リパブリック!に割り込ませて頂きたいと思うのですが出来が悪いとアップしてもらえないそうです。
宜しくお願いします。


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アキアカネです。
秋になると美しい紅色に染まるのが特徴のこのとんぼですが、夏のうちはまだオレンジ色で、ほかのとんぼと見分ける事がとてもむずかしいです。僕も見分けられません。

体長:3.5~5㎝
幼虫の食べ物:水生昆虫、メダカ、アカムシ(ユスリカの幼虫)
成虫の食べ物:小さな昆虫

この他にも南房総にはオニヤンマやシオカラトンボやハグロトンボなど様々な種類のとんぼがいます。とんぼが好きなひとは南房総に見に来るのもいいかもしれませんね。


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モンキアゲハです。
ヒガンバナにとまったモンキアゲハは何度も見たことがありますが、いつみてもきれいです。

羽を広げた長さ:9~10㎝
幼虫の食べ物:柑橘類の葉
成虫の食べ物:花の蜜

叉割り込ませて頂きます。さようなら。

(文・写真/ニイニ)
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by babamiori | 2010-10-06 22:21 | ニイニ



ひょんなことから、南房総に8700坪の土地を手に入れてしまいました。平日は都心で建築ライター・コーディネーターとして働き、週末は南房総で野良仕事。ちょっとムリして始めてみた二重生活ですが、気付けば主客転倒で、どっちがメインの住まいかわからなくなっています。田舎暮らしの衝撃と感動、苦悩と快感をそのまま綴ります。 ニイニ中3、ポチン5年、マメ1年。

by babamiori
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