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「裏道」とか「裏山」とか「裏」のつくところには行ってみた方がいい!
出不足金、4000円。

これを「いつも出られなくてゴメンナサイ・・・」と恐縮しながら手渡す、というのが常だったわたしたち。別に責められたりすることなんてないのですが、こちらとしては毎度ホントにトホホなかんじでありまして。

何に出られないかと言うと、年に数度ある「道普請」(みちぶしん。共同で使う道を直したり、道ばたの草刈りをしたり、農業用水路の保全作業をすること)です。
都会に住んでいれば「高い税金払ってるんだから、そりゃもちろん行政がやるでしょ」というたぐいのことなのですが、田舎では自分たちでやるのが当たり前。
この作業に出られない時は「出不足金」というものを集落の取りまとめ役の方に渡すので、まあ実質それでチャラになるわけですが、なーんかねえ。
仕方がないとはいえ、お金で解決しているかんじっていうのはどうも、気分があまりよくない。せっかく地元の方々はいつもこの新参者に対して大らかに親切に接してくださるのに、こっちは奉仕してないなーという罪悪感がつきまとうわけです。

それが今回、やっとやっと、念願の初参加を果たしました!


朝8時半。
「ママちょっと、用水路の掃除に出かけてくるから!」とマメをニイニとポチンに託し、スコップを片手に集合場所まで走っていきました。
今日は、田んぼに水を引くための準備作業です。

「どもども~」
集まったのは、総勢8人。うち6人が男性で、女はおばあさん1人とわたしだけ。
しかもみなさんのの姿を見て、ちょっとドキッ。
みんなゴム手袋はめて、防水服を着て、ヒトによっては長~いつなぎの長靴履いています。
まったく想像力を働かせていなかったわたしは、呑気に運動靴なんかはいてきちゃっていて、まるでヤル気のない感じのいでたちにしか見えません。えーそんな標準スタイル知らなかったよー。どんなすごい用水路掃除をするんだ?どうしようどうしよう、かえって足手まといか?とにかく運動靴はヤバそうだぞ。
「す、すみません、長靴はいてきます・・・」
と比較的若い若旦那のMさんにこそこそ耳打ちして、ダッシュで家に戻りました。

5分後。
ゼーゼー言いながら集合場所に戻ると、みんなで何やら目配せしています。
え?・・・わ、わたし、まだ何かヘン?
「山のほう、いっぺん見てもらっか?」
「いや~けっこう険しいからなあ、下でいいんでねの?」
「ものは経験だあ、どうかねえ」
なぜかおじさまたちは、ちょっと嬉しそう。
なになになに??なにをするわけ???

「あのよう、この田んぼに引く水の水源の掃除もあるんだけどもよう、ちょっと行って見てみますかね?この山を越えたところにあって、足もと悪いとこ歩くけど」
そう切り出してくれたのは酪農家のKさん。(いちど農道を黒い革ジャンと革のパンツを着て巨大なバイクを乗っているヒトを見かけて、仰天して見呆けていたら「どうもー」とヘルメットをとって挨拶をされてKさんと知りビックリしたことがある。異様にかっこいい。)
水路掃除ってわたし、ドブさらいだけだと思ってた。
山の中にある水源の掃除なんてするんだ!
「あ、ぜひ見たいです。いいんですか?」
するとみなさんが口々に、「もちろんええよう」「大丈夫かあ?」「見たらすぐ帰せばええって」「いっぺん見た方がええって」と盛り上がり、「じゃ、気をつけてついてきてくださいよう」と連れて行ってくれることになりました。

今まで何十回も通っていたのにぜんぜん気づかなかったのですが、うちの畑のすぐ横の農道から山に入る獣道みたいなものが存在していて、そこから山の中に進入していけるのです。
列になって進んでいくと、道はたしかに、どんどん険しくなる。急斜面には苔むした石がごろごろあり、竹が倒れている。
b0128954_15451159.jpg

みんなすっごい早足なので、わたしも絶対に遅れまいと必死に歩いてついていきます。上りつめていくとあっと言う間に見慣れない山の奥の風景になり、「ほーここがうちの裏山の中かー」と、ホントに感動です。

「この分かれ道、こっちに行くと富山(とみやま)まで続いていて、行くのはこっち」と教えてくれるYさん(以前、牛の初乳でつくった牛乳豆腐をくれた、集落の大将)の顔を見ると、ぜんぜんのんびりしたもんで、ヒーヒーのぼっているわたしはなんなんだ?というかんじ。
「こっから下るから、すべんないようになー」
こんどは急な下り道。というか道はなく、ずるずるのところをみんな慣れた足取りで下りていき、わたしの前を歩くYさんはシャベルでわたしのために足がかりをつくってくれました。
(はっきり言って東京の環境よりぜんぜん男性陣がみんな優しい!親切!紳士!見習ってほしいぞ都会の男衆よ!)

急斜面を下りきると、そこにはかつて渓流があったという石のごろごろした川底みたいなところに出ました。その空中に、パイプがずーっと通っています。
b0128954_15452260.jpg

パイプ伝いに少し進むと、そこに、水源の堰のようなものがありました。
「ほれ、ちょろちょろ水がでてるでしょ、土砂で埋まってしまって流れないからここを掃除するんですよ」
なるほど確かに、石の下の隙間から水がしみ出しています。
Kさんは早速、シャベルで土砂を掻き出していきます。
b0128954_15453734.jpg

わたしも何とか役にたたねばと、掘り出された土砂を脇によける手伝いを後ろのほうでやっていたのですが、「いいからいいから、見てるだけでいいから」「おれらがやっから」なんて笑って言われたりして。
い、いや、あまり役に立っていないのは分かるけど・・・それじゃあ出不足金のほうがありがたいってなことになっちゃうよ・・・面目ない。

作業しながらみんなが喋っていることはとっても面白くて、あー作業の間にこうやって親睦が深まっていくんだなーとめちゃくちゃ実感したわけですが、わたしにはまだまだ厳しい!!
というのは、本格的な房州弁が、ちゃんと聞き取れないのです。
「こりゃあ・・・だから・・・で・・・だべ」
「んだな・・・で・・・すっぺ」
っていうのを聞き取るのは至難の業。英語のリスニングテストのような集中力を要します。
この日に話してた話題の大意はおそらく「実はうちはずっとこの水路の水は使ってないんだ」「え?いつから?」「いや親爺の代から」「いやーそりゃ悪いなあ、じゃ無駄骨か」「べつにそんなもんでしょ」「そっかあ、悪いなあ、ご苦労さん!あっはっは!」「まったくご苦労だよ、あっはっは!」などというような内容だったかと思いますが、定かではない。
(特にKAさんというご年配の方の言うことは、他のヒトの相づちから内容を想像するしかない。時々、「・・・んだなあ!」とわたしに相づちを求めることがあると、「はい!」といいながら、ごめんなさいぜんぜんわかんない!と思ってしまいます。)
そうこうしているうちに土砂はどんどんと掻き出されていきます。

がしゃ、ぐしゃ、というシャベルで掻き出す音と、ホトトギスの鳴く声と、森のさざめきがなんとも心地よい中、とつぜん「ピリリリ、ピリリリ」とケータイの大音響が。
「おう!昔は電波入んなかったのになあ!」と驚きながらごそごそとケータイを取りだして、話しはじめたYさん。
「なに?・・・うん、うん、そう、生まれる」
・・・生まれる?!
「あそ、生まれた」
・・・生まれた?!
「はいはい、じゃ今戻るわ」

どうやら察するに、Yさんのところの牛が出産したようです。
「悪いけど先に戻るから。あとでまた来るから」
というYさんは、「一緒に戻りましょうかね。途中で昔のヒトが掘った水路を見せてあげるから」と声をかけてくれました。

一緒に帰ってくれるとはいえ、やっぱりついていくのにゼーハー・・・
Yさんナチュラルに足速いよ・・・
b0128954_15455941.jpg

パイプ伝いに歩いていくと、「ほれ、この上」と教えてくれたのが、コレ。
b0128954_1546768.jpg

上方に見える穴が、昔のヒトが山をずーっと掘って通したという水の道です。
山を手堀りで、どうやって?
その気の遠くなるような作業は、わたしには想像ができません。
「いったいどうやって掘ったんだろう」と思わずつぶやくわたしにYさんは「昔のヒトはすごいよなあ」とつくづく感心している風。

「昔はね、このへんもぜんぜん違ったと思いますよ。毎年山の様相は変わる。この沢に水が流れていた頃は、イノシシはここで沢ガニをとって食べていて、人間の住む方には出てこなかったんですよ。
b0128954_15462647.jpg

それがここ5年くらいで、山を越えてどんどん入ってくるようになった。このへんは暖かいから、イノシシは春と秋の年2回出産するんですよ」
見ると、イノシシが滑り降りた跡や、駆け上ったひづめの跡などが山の斜面に残っています。
「どうしたもんかねえ」と、Yさんはひとつため息をつき、「じゃ、急ぐんでついてきてください」と足早に斜面を上りはじめました。


山から出たあとは、田んぼの脇の溝をさらう手伝いをし、パイプのつなぎ目を修繕して水を通す準備をしていきました。
わたしはといえば、なるべく邪魔にならないように、見よう見まねで手伝いをしながら、さらった泥をじーーーーーーーっと見たりして。
時々、ハッとしゃがんで、なんか拾ったりして。
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実は作業に出かける前にニイニから「用水路にはサンショウウオの卵があるはずだから、見つけたら返しておいてよ」と涙ながらに頼まれていたのです。
確かに、わたしが救済した卵嚢はぜんぶで7~8個あったかな。これが全部干上がって死んでしまうと思うとたしかに、やりきれない。
見つけると、素知らぬ顔でホイッと溝に戻すんです。
「頑張って育つんだぞ!!」と心の中で檄を飛ばしながらね。

さて、いよいよパイプも繋がって、
b0128954_2052939.jpg

あとは水が出るだけだというところまできたのに、なぜか水がでません。
「水圧が低いからか?」とか「なんか詰まっとるのか?」などとパイプに耳をつけたり叩いたりしていましたが、一向に出る気配がありません。
「ここまでは水の音がしてるから、水は来てるよ」なのになぜ・・・

と、そのとき、水が「ブシュワッ!!!」と炸裂するように出てきました。
パイプの端で水を待っていたMさんが、それを見て爆笑。
「すごいぞっ、すごいもんが出てきたぞっ」

水の流れを断固として止めていたのは、コチラ!
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「おまえかっ!」みんな大爆笑。
わたしが一度手にとって愛でたあと「ほらいきなさい」とそのへんに放すと、Kさんが「こいつぁよく太ってるから食用になるんじゃねか?」と一言。
うっ・・・!
みんなイノシシは食べるけど、カエルも食べるのか・・・!

そんなこんなで、ようやく水が開通したわけです。
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これからこのあたりは、鏡のような水田の風景が広がることになります。


いやあ、道普請、面白かった。
1回目で若干特別扱いをしてもらった感がありますが、すごく勉強になりました。
あんな山奥で沸いてくる水でここのお米を作っているなんて知らなかったし、自分の家の裏に、屋久島のような風景が広がっていたことも知らなかった。
2年以上ここに関わっているのに、まだ何にも知らないんだな。

ということを、作業に参加していたY家のおばあさんに話すと、「いや、わたしも山に入ったことなんてほとんどないし、水源も見たことないんですよ。ありゃあ男のヒト達の仕事だから」。

うーんそうか・・・
みんなが優しかったのは、女のヒトは山の中にはあまり入らないからなのかもしれません。封建的とも言えますが、男女の仕事の分担って田舎ではすごくはっきりあるのです。

わたし、でもやっぱり、山に入るの楽しかったし、もっとこの土地のことを知りたい。
野菜作りや山菜料理も上達したいけど、許されれば、男のヒト達がやっていることも、教えてもらいたい。
そんな欲張りな思いが、去来したのでありました。
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by babamiori | 2009-04-17 15:55 | 田舎暮らしのこと



ひょんなことから、南房総に8700坪の土地を手に入れてしまいました。平日は都心で建築ライター・コーディネーターとして働き、週末は南房総で野良仕事。ちょっとムリして始めてみた二重生活ですが、気付けば主客転倒で、どっちがメインの住まいかわからなくなっています。田舎暮らしの衝撃と感動、苦悩と快感をそのまま綴ります。 ニイニ中3、ポチン5年、マメ1年。

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