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旅のプロローグ:踏んだり蹴ったり殴られたり。
砂漠って、どこよ?

と、つっこまれておりますが。

紙粘土でできてるか顔にぶつける用でしょうとしか思えない合成着色料をふんだんに使ったケーキがどこのスーパーでもたくさん売られていて、それを「ママ、そのブルーのケーキがおいしそうじゃない!」と言いながらフツウに購入する国といえば、ご想像どおり「アメリカ」です。
行ったのはアリゾナ州~ユタ州~ネバダ州で、フェニックスからラスベガスまでレンタカーでひたすら走って行くという行程。
ラスベガスに寄るのは、無論ポチンサービスのためです。

なぜアメリカの砂漠に?というと「砂漠を旅するならアメリカがいちばんカンタンだから」。
なるほど、言葉も通じるし(スペイン語やアラビア語やスワヒリ語よりは)、レンタカーでまわっても危なくないし、第一、もう何度も行っているからそれなりに手順が分かっているし。

なぜ砂漠を旅するかって?

それは夫に聞いてください。

「誰もいない早朝の砂漠で車を走らせるあの感覚、もう何年も味わってないよな~」と切なそうに嘆息していたかと思うと、「あー、もうダメかもしれない。これ以上行かないとオレは狂ってしまう!!」と禁断症状を気取ってみたりと、半年以上いろんなパフォーマンスを繰り広げてわたしをじわじわと洗脳し、「次の休みはどこに行く?」という話になったときに「・・・どうせ、砂漠に行きたいんでしょ」とわたしに言わせるように仕向けた夫。
「いやーオレは別に海でもいいんだぜ!ゴールドコーストとかモルディブとかはどお?家族全員が楽しめるのがいちばんだからな!」と一応HISでパンフレットをかき集めたりしてみせるくせに、夜な夜なこっそりアメリカ行きの格安航空券のリサーチをしていた夫。

でまあ、わたしとしてはしんどいが、7年ぶりだし、たまたま休みがとれるのが航空券の安い時期だったりもしたし、砂漠行ってあげてもいいかなーと思ってしまったわけ。
ニイニも大自然の旅は好きだろうしね。
「3人もこども連れて、そんなあてもない旅、大丈夫なの?」と心配してくれる身内や友人に笑顔で手を振って出かけたわけです。

空港の展望台から電話をするニイニ。
「・・・うん、これから乗るよ。だいじょうぶ。巨人戦の結果、途中で電話するから教えてよ」

そんなことで国際電話させるわけないだろうが。
旅のプロローグ:踏んだり蹴ったり殴られたり。_b0128954_17333628.jpg


こんな風に、なんの問題もなく、パスポートも忘れず(以前わたしが全員分のパスポートを紛失したことがありまして。空港でヒーヒー泣きながら探し、もうダメ忘れたと思った瞬間、ポチンのおむつ入れの中から4人分出てきた。搭乗30分前。)予定通りに飛行機に乗ったのですが。

そこから先、我が身の不幸を呪う展開が相次いだのです。
(とてもとてーも長い愚痴になりますが、どうかこらえて読んでください。)

まず、離陸しない。
待てど暮らせど。
さすがにおかしいと機内がざわめいてくると「設備系に異常が見られたため、原因を調査中です」とのこと。そして「エコノミークラスのお手洗いですが、3つのうち2つは使用できなくなっております」とのこと。

トイレの故障で飛べないのか!なんじゃそりゃ!

結局2時間半待たされた挙げ句、トイレは直らず出発してトイレに不自由な旅を強いられ、マメは過去最大級のぐずりで「伊東にいくならハ・ト・や」の宣伝のカツオ状態ののけぞりを見せ、サンフランシスコでの乗り継ぎ時間が2時間だったわたしたちとしては当然乗り継ぎ便に遅れることになり、次の便に乗るとフェニックス着が23時という事態になることが判り、そんな深夜にレンタカーを借りてモーテルを探すという悲惨な運命が待っていることになり・・・

目の下にクマつくって「ついてないなあ」とぼやいていると、夫からひとこと。

「そういえばさあ、ねえ、国際免許証って、とったっけ?」

・・・とってない。
とってないよ。
あなたもわたしも、とってない。圧倒的にとってない。
警察署に行って手続きした記憶はない。

「ってことは・・・レンタカー、借りられないじゃないか」

・・・・・・・・・・・・ほえ?

すべての移動はレンタカー頼みというこの旅行で、レンタカーが、借りられない?

「ってことは・・・フェニックスに着いても、ラスベガスまで行けないじゃないか」
まさか。
「そんな・・・電車とか、バスとかは?」
「んなもの無理だよ。赤ん坊とスーツケース3つ持って、どうするんだ?」
「・・・じゃ、タクシーは」
「ラスベガスまで?運転手も一緒に泊まりながら?そりゃできないことはないかもしれないけど、いくらかかるかね。100万は覚悟だぞ。」

がーーーーーーん。

もう、わたしは、完全に死んだと思いました。
大変な思いをして段取り、準備をし、こどもたちの体調を整え、万端でむかえたはずの旅行が、あじゃぱ?

「レンタカーがなければどうもならん。このまま日本に、帰るしかないと思う。サンフランシスコから、帰ろう」

こういうことってあるんだ・・・
たったひとつ、致命的な忘れ物をしたことで、すべてが台無しになるという。
それにしても、わたしはこんな基本的なことを、今の今までまったく忘れていました。いつもアメリカに行く前はどんなに忙しくても警察署に足を運び、ボール紙でできた「国際免許証」を発行してもらい、後生大事に持っていっていたというのに。7年ぶりとはいえ、その存在は頭をひとかすりもしませんでした。

わたしは今までだいたいのピンチはどうにか切り抜けて生きてきていたので、「最終最後にはどうにかうまくいく」というやみくもな自信があったのだけれども、免許のない人間に車を貸すことなどまずないだろうし、この問題にはどこにも抜け道がないと瞬時に察しました。


学校を早退した時、友達から「ガラガラヘビに気をつけろよ!」「生きて帰ってこいよ!!」と見送られて嬉しそうに出発したニイニや、「ラスベガスでサーカスみるんだ!」と目をキラキラさせていたポチンや、訳も分からずしがみついて同伴してくれているマメに、申し訳なくて、情けなくて、ことばがありません。

その後、機内食などまったく食べる気もせず、ひたすらマメを抱き続けて無為の10時間を機内で過ごし・・・時々夫婦で暗く顔を見合わせて嘆息し・・・

乗り継ぎのサンフランシスコに到着後、世にも暗い声で、日本にいる同居の義母に電話をかけたわたし。

「サンフランシスコに着きましたが、国際免許証を忘れたので、これから帰ろうと思うんです」

すると、電話のむこうから、こんな言葉が返ってきました。
「あら大変。
 でもわたし、6年前にロスでレンタカー借りたわよ。国際免許証なしで」

・・・・・・・・・・・・ほえ?

今までアメリカでレンタカーを借りる際は必ず国際免許証をとっていたわたしたち。もちろん必須でしょうと思っていたら、その後留学経験のある親切な義弟から「ハーツの規約を調べてみたら、日本の免許証はマストだけど、国際免許証はレコメンド(推奨)でしかないみたいですよ」とのメールあり。

「じゃ、日本の免許があれば乗れるってこと?」
「・・・らしいな」

わたしは、どーっと安堵した勢いで体中の血液が陽気に循環しはじめた気がしました。
体が急に軽くなり、抱いていたマメもふっと軽くなり、あとはなんだって出来ると思える活力が漲ってきました。
もう帰るしかないなんて思っていた最悪の事態が後ろに遠ざかっていく喜び・・・
大きな災難が払拭されると、一緒に小さな災難もふきとんでしまいます。

「よっしゃー!!レンタカーさえ借りられれば、なんの文句ないわ!遅れて深夜に到着しようがかまいやしないわよ。予定通りに旅ができるじゃない!?」


やっぱりわたしって土壇場で救われる体質だったわ~となんの根拠もない自信をさらに深めたのでありました。でも、今までわたしたちって、毎回毎回必要のない国際免許証を半日仕事を休んで必死でとりに行っていたということか?
まあいいさ。
勝手に落ち込んで舞い上がっている自分たちのアホさ加減だって許せちゃう。
だってだって、予定通り、車でアメリカの砂漠をキャラバン出来るって分かったんだもん!


・・・その後、順調だったかって?
とんでもない。
この日は、何年かに一度の大不運の日だったらしい。

やっとこさフェニックスの空港に到着し、どろどろに疲れた体に鞭打って「さあてきぱき行動しよう!」と大股歩きでバゲージクレームに行くも、大きなスーツケースがひとつ、出てこない・・・
係のおばさんに聞くと「ああ、その荷物なら、サンフランシスコに留まってしまってると連絡があったわ。こっちにまわしてくれって伝言は残しておくけど、もう夜も遅いしねえ。運がよければ明日に着くだろうけど・・・はっきりしたことは今は何とも言えないわ。まあ、明日連絡してみて」とのこと。。

ヒトの荷物だと思って!!とおばさんにキレても意味がないので、「踏んだり蹴ったりとはこのことだな」と心底ぐったり疲れたままとりあえずハーツレンタカーまでバスで行くことに。
深夜で窓口が少ないため、さんざん待たされた挙げ句「予約しているんだけど」と予約表を見せると「ああ、このナビ付きのトレイルブレザークラスの車は、今ないみたいです。ひとまわり小さいのか、ナビがないのならあるけど、どうですか?」とのこと。
「ナビがついてないと困るし、小さいと荷物が入りきりません!!予約したのに!!」と言っても首をすくめるだけの受付おねえさん。「エニウェイ、今ある車を見て決めてください」と言われ、しぶしぶナビなしのフォードエクスプローラーで手を打つことにしました。ないものはないし、ごねるだけの気力も体力も英語力もなく・・・がっくり。

なんとか車で走り出し、すぐにでも空港近くのモーテルに入ろうと慣れない右車線の道をうろうろ探し、やっと見つけた宿には「空室?もうありません」と首をふられる始末。
「今日はレイバーデー(労働者の日)だからどこもいっぱいかもしれないわ」とすまなそうな目で言い、肩を落として出て行くわたしにむかって「グッドラック」と。

「グッドラック」。
なんと不吉な言葉。
「こんな連休の夜中なんてきっとどこにも空き室なんかないだろうけど、よっぽど運が良ければ見つかるかもしれないし、がんばって」と。

言うまでもなくわたしたちのその日は、史上最悪に不運な日。
不運のパンツを履き、不運のズボンと上着を着て、不運のキャップをかぶり不運のリュックを背負った、不運フル装備の日。
そのわたしたちに、「グッドラック」と?
幸運なんてどこはたいても出てこないさ。
だいたい、アメリカのこどもたちの夏休み最後にある連休でみーんなマイカーで家族旅行をするという期間の初日に我らのレンタカーの旅の初日が重なっていたなんて、不運以外のなにものでもないじゃないか。

あ~~~~~
アメリカの旅行ならカンタンだなんて、誰が言ったんだ?
わたしゃ安易なパックツアーで南の島に行って、気なんかもまず、苦労も心配もせず、のんびりゆったりしたかったんだぞ!!



・・・以上、愚痴おわり。
そんなはじまりの、旅行でした。こんな不毛な過去の愚痴は書かないつもりだったけど、書き始めたらとまらなくなりました。
だって、わたしたちにとって、この往路の大騒ぎは旅行の素晴らしい部分の想い出ぜんぶと同じくらい大きな想い出なんですもの。そして、これを吐き出さずにはあとの想い出が出てこないんですもの。毒抜きに付き合わせてしまってすみませんでした。。

次こそは、旅の報告らしい、楽しくて綺麗な写真がいっぱいの話にしますから!
本編はもっとまともですから。
by babamiori | 2009-09-17 17:38 |
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ひょんなことから、南房総に8700坪の土地を手に入れてしまいました。平日は都心で建築ライター・コーディネーターとして働き、週末は南房総で野良仕事。ちょっとムリして始めてみた二重生活ですが、気付けば主客転倒で、どっちがメインの住まいかわからなくなっています。田舎暮らしの衝撃と感動、苦悩と快感をそのまま綴ります。 ニイニ中3、ポチン5年、マメ1年。

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